ネイティブアメリカン その⑤セミノール族
今回はセミノール族の民族衣装についてです。
セミノール族はもともとはフロリダ州で暮らしていたけれど、現在ではオクラホマ州でも暮らしている部族です。セミノール族の民族衣装は南東部の他のどのネイティブアメリカンのものよりも、多くの伝統的要素が受け継がれているそうです。
セミノール族特有の要素としては、鮮やかな色合いの、幾何学的な模様のパッチワークがあります。このパッチワークがいつ頃発生したのかについては諸説あります。セミノール族が誕生してから約百年後(セミノール族はジョージア、ミシシッピ、アラバマ、フロリダのネイティブアメリカンが合体してできた部族です)の、19世紀初頭には存在していたという説もあれば、精巧なパッチワークの衣服は1920年代までは存在しなかったともいわれていたり。ただ、足踏みミシンの導入によって、より細かで複雑なデザインが誕生したことは確かなのだそうです。
歴史の初期はなめし皮の衣服を纏っていたこれまでの部族とは違い、セミノール族は誕生から18世紀半ばまで、鹿の皮や腱を用いることの方が稀でした。なぜかというとそもそも供給量が少なかったからです。そのため、男性は、手織りや手編みのヤシの葉製のブリーチ(褌あるいは腰布)を用いていました。また特別な衣服として、沢山の色とりどりの羽毛から成る外套も着用していました。
ところでアメリカの歴史では、セミノール戦争(フロリダ戦争とも)というワードが登場します。セミノール戦争は計三回起こったのですが、原因とか背景は察してください。
このセミノール戦争の間に、セミノールの指導者たちは白人の衣服である立て襟とクラバット(ネクタイの一種で、スカーフとネクタイの間に位置するもの)、あるいはカジュアルなシャツと明るい色のサッシュというスタイルを取り入れました。たっぷりした膝丈のスカート(実際はドレス)を着用している男性もいたそうです。レギンスが明確に着用されだしたのもこの時期でした。ついでに、上記のパッチワークが発展していったのもこの期間でした。なお、パッチワークの技術を利用して最初に作られたのは、白人の衣服を模倣したものだったそうです。
こういった経緯で、18世紀も後半になると、あからさまに燕尾服や軍服から派生したらしき衣服が、一部のセミノール族の間で着用されるようになりました。もっとも軍服を真似たのはセミノール族ではないのですが。軍服はネイティブアメリカンに強い影響を及ぼした、最初のヨーロッパのファッションなのだそうです。
そんなこんなで、セミノールの男性は単色あるいは縞柄の綿布もしくはキャラコ(インド産の平織りの綿布のこと。丈夫で実用的)製の、コートのような膝丈の巻き衣を着用するようになりました。これにターバン(ダチョウの羽根飾り付きのことも多かった)と白いシャツ、幅広のベルトが加わります。更に銀製の三日月形の記章もしくは円盤をネックレスとして身に着けていたのですが、これらはヨーロッパの軍人の模倣でした。北米に起源があるものといえば、履いていたモカシンぐらいのものでしょう。
女性の場合も18世紀半ばまでは、大抵は地衣類やヤシの葉製のスカートを履いていました。手織りのヤシの葉製のマントなんてものもありました。ついでに、鹿の皮製の巻きスカートも、存在はしていたそうです。もっとも、寒い時は皮製の巻き衣やショールを羽織っていたそうなので、あくまで皮製の衣服を普段使いしているのは少数だった、ということなのでしょう。ちなみに、この時代のセミノールの女性たちは裸足でした。
19世紀には、セミノールの女性は白人の色柄をプリントした木綿のドレスやブラウス、たっぷりとしたスカートを着用し、気候に応じてショールも用いていました。19世紀末には、肘竹のゆったりとしたケープ+裾が床に擦れる長さのギャザースカートというスタイルだったそうです。スカートはプリントの木綿から作られ、パッチワークの技術によって帯状の模様が水平に入れられていました。また、装飾として細長いブレードが帯状に付けられてもいました。
現在、上記のようなスタイルの衣服は祭礼などの特別な時用の衣服になりました。上記のケープと床丈のスカートを普段着にしているセミノールの女性は僅かにしかおらず、観光客向けではない衣服はサテンなどの光沢がある生地から仕立てられているそうです。
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