中央アジア その⑤カザフスタン・女性編

 今回はカザフスタンの女性の民族衣装についてです。

 カザフ人の伝統的な民族衣装は、女性のものもやはり平面的な仕立てになっております。そして男性の場合同様に、上衣+脚衣+外衣+帯+帽子(被り物)+履物で成り立っています。


 上衣は、男性のジェイデと同じものは着用されないようです。ただし男性も着用していたコイレクは女性も着用するようです。コイレクの他の上衣には、袖なしの黒地に刺繍を施したカムゾルというものがあり、ドレスの上に着用します。

 他に、外出時に着用するベシペントというものもあります。ベシペントは長袖か半袖の上衣です。綿や絹、毛織物にビロードなどから仕立てられ、刺繍やモールで飾られました。色は赤や緑が好まれたそうです。男性のベシペントはロシア併合後に誕生したものですから、おそらく女性のベシペントも同様でしょう。

 女性のコイレクは筒型で、丈と袖が長い衣服です。襟は低い立襟で、胸は襟元まで開いているのですが、紐で結ばれます。材質は木綿で、着用者の年代によって色が異なります。中高年は白か黒、若い女性は濃い赤や鮮やかな青や緑のコイレクを好んで着用したそうです。

 コイレクは前述の通り、本来は平面的な構造の衣服です。しかし例によってロシア併合後、立体的な仕立てに変わりました。加えて、タタール人の影響を受け、ウエストの部分から布をいで(=布と布を繋ぎ合わせて)ギャザーを入れたり、裾にフリルを数段付けたりしたコイレクも登場したそうです。他には、ウズベク女性の影響により、スモックのようなコイレクも誕生しました。


 脚衣は男性の場合でいうダムバルと同じ名称で、同じタイプのものを着用します。男性のダムバルと違うところがあるとすれば、袖口が模様入りの組紐・ジャクで飾られているところでしょうか。

 外衣は男性も着用していたシャパンを着用していました。女性のシャパンには伝統的な仕立て方の綿入れのものと、冬季用の毛皮製のものがありました。帯は布製もしくは幅が広い革製で、金属の留め金や板で飾られることも。裕福な女性の場合は、刺繍が施されたビロードや絹の帯・ケメルを銀や金のメッキで飾ったそうです。


 カザフ人女性の髪形は、結婚する前か後かで違いがありました。結婚前の娘時代は細い三つ編みを約30本も編み、端で二本にまとめていました。しかし花嫁となり、生まれ育った家から嫁ぎ先に移る際に、何本も編んでいた三つ編みを二本に編みかえたのです。

 髪形同様に、帽子もまた結婚する前と後で違いがありました。更に、時代によっても流行り廃りがありました。例えばタキヤ・ボーリクという帽子は最も古いタイプの娘用の帽子です。タキヤ・ボーリクは布から作られ、幅広の毛皮で縁取られる、円錐形の帽子です。尖った頂には更に護符としてワシミミズクの羽根の束が付けられていました。もっとも、19世紀末頃から頂は低くなり始め、先が尖ったものは稀になったそうなのですが。

 カザフスタンには前述の未婚女性用の帽子と後述の既婚女性用の被り物の他に、その中間とも言える帽子・サウケレもありました。サウケレは19世紀後半には廃れ始めていたそうなのですが、かつては前述の髪形を変えた後から一年間と祭日に被られていたそうです。ちなみに、嫁ぎ先に移る際はサウケレの上に背中を覆い隠すサイズの絹のショールをも被りました。

 サウケレは高い(裕福な女性のものだと70cmに達したことも)円錐形の帽子で、赤い毛織物やビロードで覆われています。そして更に、宝石や金銀の飾り板、ビーズで飾られ、珊瑚や銀の飾り板のこめかみ飾りが吊るされていました。 

 既婚女性は顔面だけを出し、頭や肩、背に胸を覆い隠す被り物を使用しました。この被り物はキメシェクといい、多くは白い木綿製ですが稀に絹製のものもありました。装飾として、胸や額の部分に刺繍を施し、顔を囲む部分の縁にビーズや珊瑚、銀の飾り板を縫い付けることも。

 キメシェクは家の中でも被られていたのですが、外出のや客が訪れた際は、上にターバンを巻いていたそうです。もっともこのターバンも19世紀後半から見られなくなり、代わりにロシア製のスカーフが使用されるようになったそうなのですが。


 最後に、前回述べたように履物について述べていきます。カザフ人の履物には幾つか種類があります。例えば古いタイプの左右の区別のない、革製の長靴。長靴には他に、夏用の丈が短いものに、乗馬用の丈が長いもの。フェルト製の長靴と、その上に履く冬用の長靴などがあります。貧しい人は、獣の皮の破片でサンダルの形を作り、細い革紐で縛って使用することもあったようです。

 盛装の場合は、色付きのモロッコ革やビロード製で時に絹糸で刺繍が施された長靴・マシと革製の短い靴ケビシを組み合わせて穿いていました。他に、女性はハイヒールの革靴を履いたりもしたそうです。

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