中央アジア その①ウズベキスタン・男性編

 久々にアジアに帰ってきました。そういう訳で今回はウズベキスタンの男性の民族衣装についてです。

 ウズベキスタンの男性の民族衣装は上衣クイラク脚衣イシトン外衣チャパンを羽織るか帯を締める(ベルトもある)+被り物+履物となっております。また上記の衣服はいずれも平面的な仕立てになっております。


 上衣は幅広の筒型で、丈は膝まであります。裏地はついていません。袖もまた筒状で、長さは手首まであるそうです。材質は手織りの白や縞柄の粗い木綿だったそうですが、ロシアによって併合された後は工場製の布が用いられるようになったそうです。

 襟ぐりにはパターンが幾つかあります。一つは、首に沿って開いたタイプ。二つ目は、両肩の先まで水平に開いていて、組紐で縁取りされているタイプ。三つめは、深いV字型に開いたタイプ。また、そもそも筒型ではなく前開型で、小さな襟がついたヤフタクという上衣もあったりします。


 脚衣は幅がかなり広い(広げてみるとほぼほぼ正方形)、踵までの長さのズボンで、上端に紐を通して締めて着用します。幅広とはいえ、まるで正方形の下の辺の中央を三角形に切り取ったような感じで、裾に行くにつれて裾が細くなっていきます。

 材質は基本的には手織りの木綿(ただし上衣同様、後に工場製にとってかわられました)。ただ、競技や狩猟の際に着用するものには、革やフェルトで作られたものもあったそうです。これら脚衣は素肌の上に直接着用するのですが、外出の際は同じ形で暗い色のものを更に重ねて穿いたのだとか。


 外衣は前開型で襟とおくみ(前身頃と襟の間に付けられた布)、脇にはまち(動くために必要なゆとりを作るため補われる布)が付けられ、裾にはスリットが入れられています。もっとも、ロシア併合後は立体的な仕立てのカムズールというものが浸透したそうですが。カムズールはテーラー襟(紳士服によくある堅い襟のこと)もしくは立襟で、胸ポケットが付いたコートで、洋服のように右を前にしてボタンで留めて着用します。

 伝統的な外衣の筒状の袖は指先を覆うほどの長さがありました。また、前後の身頃は別々にではなく、一続きになるよう裁断されていたそうです。開口部には装飾や補強として、はたまた魔除けとして組紐がつけられていました。紐は胸にも付けられていて、祈祷の際は結んだそうです。

 仕立ては単衣(裏地なし)や袷(裏地あり)、綿入れなど様々。袷の場合の表地は絹に綿、緯錦よこにしきよこいと に色糸を用い、文様を織り出した布のこと)の縞柄や絣の布。裏地は木綿や更紗でした。王侯貴族など裕福な者の場合は表地は金襴やビロードに更に金の刺繍を施し、裏地は絹というザルチャパン(「ザル」は「黄金」の意味)という、名前からして豪華な外衣を着用していたそうです。裕福な家庭では、チャパンの上にこのザルチャパンを羽織ったり、ベルト・カマルを締めていたのだとか。

 裕福な男性は更に、主に冬にチャパンの上にチャクマンもしくはプスチンという外衣を重ねました。チャクマンは雌羊か駱駝の毛製、プスチンはオレンジ色に染めた雌羊のなめし革製の外套で、帯を締めずに着用します。これらの外套はオアシスの――言い換えれば都市の住民のみならず、草原や荒野にすまう人々にとっても必要だったそうです。おそらく防寒のために必要だったのでしょう。


 帯にも幾つかタイプがあります。着物でいう兵児帯のような帯・フタは手織りの綿か毛製で、長さは約3mもあります。風呂敷上で、三角形に折って前で結ぶ帯・ベルボクは一辺が約1mの長さで、周囲には刺繍が施されています。留金付きのベルト・カマルは革や絹、ビロードに金銀のモールや絹糸で刺繍が施された、豪華なものです。


 被り物は、まず縁なし帽か、ターバンかに大別されます。そして縁なし帽タイプの中にも布製だったり毛製だったり、はたまた形や模様に地方色があります。ターバンは綿か毛、あるいは両者の交織の布から仕立てられるのですが、多くは上記の帯・ベルボクで代用しているそうです。ターバンを巻く際は、まず縁なし帽を被って、それから巻きます。巻き方は個人が属する社会的なグループによって異なるそうです。


 伝統的な履物にも幾つか種類や履き方があります。靴底が柔らかな長靴・マフシにイチギは、その上に更に短い靴・カヴァシを穿きます。他、踵が高い長靴・エチクに丈が短い靴・ムッキなどがあります。

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