シベリア その⑨ユカギール人、チュクチ人

 今回はまず、ユカギール人の民族衣装について述べていきます。ユカギール人の居住地は南北に分かれており、北部ユカギール人(ツンドラ・ユカギール)はサハ共和国コリマ川下流部、南部ユカギール(タイガ・ユカギール)はコリマ川上流部とマガダン州スレドネカンスキー地区に居住しているそうです。なお、コリマ川とはシベリア北東部を流れる川のことです。

 宗教はシャーマニズムとロシア正教。言語はユカギール語、ロシア語、ヤクート語を使用します。ただし、現在ではメインで使われるのはロシア語かヤクート語。ユカギール語話者は二百人以下しかおらず、絶滅の危機に瀕しているそうです。そもそも人口が二千足らずなんですけれどね。

 肝心の衣服についてですが、ユカギール人の毛皮製外衣は、前で紐で結ぶ前開型で、トナカイの毛や皮、布などのアップリケで飾られているということしか分かりませんでした。


 次はチュクチ人についてです。チュクチ人はチュクチ自治管区のチュクチ半島に居住しています。なお、チュクチ自治管区はロシアの中でも厳しい風土の土地なのだそうです。言語はチュクチ語とロシア語を使用し、宗教はシャーマニズムと正教を信仰しています。

 なお、チュクチ人は以下の二つのグループに分かれています。


海岸チュクチ:海岸に定住し、アザラシなどの海獣を狩ったり漁撈ぎょろう(魚介類や貝、海藻を捕獲・収穫する活動のこと)をしたりする。

トナカイチュクチ:内陸に居住し、主にトナカイの牧畜を営んでいる。かつては遊牧を行っていたが、ソビエト時代に定住が進められた。


 チュクチ人の衣服はトナカイやヘラジカ、アザラシやセイウチから作られます。興味深いのは、毛皮だけでなく腸からも服を作ることです。なお、イヌイットも腸から衣服を作ります。腸から作る衣服は防水性に優れているそうなので、風土を考えたらぴったりの衣服なのですね。ちなみに、この腸の衣服はトドやクジラの腸からも作られるそうです。

 毛皮の鞣し方は民族によって異なるのですが、チュクチ人は脂肪を取り除くために朽ち木の粉末を振りかけ、揉んで処理するそうです。

 毛皮製の衣服については、男性の前閉型の外衣クフリャンカと女性や子供の衣服ケッツィがあります。

 クフリャンカはトナカイやアザラシの毛皮から作られます。丈は膝までで、袖付け(袖を身頃に縫い付ける部分)は広く、袖口は狭くなっています。襟、袖、裾には犬やアナグマの毛皮で縁取りをします。チュクチ人の男性は素肌にクフリャンカを二枚重ね(細長い脚衣も二枚重ねます)、革帯を締めます。帯にはナイフやキセルを下げます。

 ケッツィは二頭分の毛皮から仕立てる、上下が繋がった、袖が広い衣服です。授乳のため胸元は深く開いています。ケッツィは夏は一枚、冬は二枚重ねて着用します。

 

 腸の加工については、以下のようになっております。

 まず、中身を取り出して縦に切り開き、乾燥させます。すると腸は幅10~14cmの油紙状になるのですが、一着作るには約25m必要なのだそうです。もっとも、子供用と大人用では必要な量は当然違うでしょうけれどね。

 何はともあれ、乾燥させた腸を腱の糸で立体的に縫っていきます。フードも付けます。赤く染めた皮や毛皮で装飾もほどこします。


 

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