シベリア その④マンシ人、ショル人

 今回はまずは、前回述べたハンティ・マンシ自治管区・ユグラに住まうマンシ人について述べていきます。前回まとめて説明しとけよって思ったそこのあなた! 私もそう思ってます!!

 ……なにはともあれ、いつもの説明に入らせていただきますね。マンシ人は主に狩猟と漁業を営んでいるようですが、北部ではトナカイの飼育、南部では牛の飼育と農業も行っているそうです。

 マンシ人はシャーマニズムと正教を信奉し、マンシ語とロシア語を操ります。このうちマンシ語は前回のハンティ語ともに、オビ・ウゴル諸語というグループを形成します。ちなみに、ハンティ人とマンシ人は遡れば同じ祖先を持つそうです。と、言ってもこの二つの民族の祖先が分かれたのは紀元前一世紀のことらしいですが。

 またオビ・ウゴル諸語はハンガリー語とウゴル諸語を形成します。ウゴル諸語はフィン・ウゴル語派に含まれます。なお、ハンガリー人(マジャル人)の祖先はウラル山脈のあたりで暮らしていたのですが、長い時間をかけて中央ヨーロッパまで移動してきたのですね。

 マジャル人はその後、キリスト教に改宗し、周辺諸国の影響を受けたので、現代では文化的にはハンティ人やマンシ人と共通するところはあまりないかもしれません。それでも、言葉の構造には共通点があるのです。

 で、肝心のマンシ人の民族衣装についてですが、あまり詳細な記述がありませんでした。もっとも、トナカイの毛皮はもちろん、毛織物から服を仕立てるのは間違いないでしょう。


 次はショル人についてです。ショル人は西シベリア経済地区の南部に位置するケメロヴォ州で暮らすテュルク系の民族です。ショル語を操り、現代では正教を信仰している……とされていますが、実際はアニミズムやシャーマニズムの要素を色濃く残しているそうです。

 そして民族衣装ですが、参考文献には平面的な仕立てで前開型の上着ケンディルを着て、帯を締めるとありました。このケンディルは夾竹桃の繊維から織られた、絹よりも光沢がある布から仕立てられるそうなのですが……怖くないですか? だって夾竹桃ですよ? 割とヤバい毒が樹全体にあって、死亡事故も報告されてますよ? なんなら周辺の土壌すら毒を有するようになるレベルですよ? 

 ついでに、夾竹桃に含まれる有毒成分であるオレアンドリンは熱に強く、乾燥させても無毒化されません。有毒成分は口に入れなければ大丈夫とも言われていますが、樹液が肌に触れると皮膚炎になることもあるそうです。……よく布にするまで無事でいられますね。いや、そもそも布にしようとチャレンジする時点で凄い。でももしかしたら、寒ざらしや、あるいはフグの卵巣の糠漬けみたいな加工を経れば無毒化されるかもしれませんものね。

 ですが、夾竹桃の原産地は温暖な気候なところで、寒い地域では霜から守るために覆いをかけるなどしなければいけないそうです(-5℃になると落葉するとか)。……シベリアの気候で夾竹桃って、そもそも育つんでしょうか。


 樹皮を原料とした布、その名も樹皮布は世界各地で作られます。シベリアに近い地域だと、アイヌ民族のアットゥシもそうです。ですが上記の諸々により、私は「ショル人はケンディルという民族衣装を着ているけれど、その原料は夾竹桃ではなく別の樹なのでは」と結論付けました。でも夾竹桃から布が作られている可能性もあると思うので、何かご存じの方がいたら教えてくださいね☆

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