ヨーロッパ その⑰イタリア・サルデーニャ島
今回はイタリアの特別自治州の一つであるサルデーニャ島の民族衣装です。なぜサルデーニャ島かというと、サルデーニャ島の民族衣装はイタリアでも有名なのだそうで。また、イタリア本土のファッションは歴史の過程で他の国のファッションに多大な影響を与えたので、別にいいかなと思いまして。もっとも、サルデーニャの民族衣装はスペインの影響を最も強く受けているそうなのですが。
サルデーニャの民族衣装は、女性の場合は島の各地で様々なバリエーションがあるものの、男性の場合はどこのものも同じなのだそうです。
サルデーニャの男性の民族衣装は基本的に以下の要素で成り立っています。
・50cmほどの高さの筒状の帽子。色は黒か赤で、サルデーニャ産の手織りの毛織物(オルバーチェ)かビロードから作られます。
シャツ(ベントーネ/カミーサ)
・綿もしくはリネン製の、丈が長くてゆったりとしたシャツ。袖口にはカフスボタン用の穴があり、また襟に刺繍が施されたりされていなかったりします。
ベスト
・シャツの上から着用するもので、毛織物やビロードから仕立てられ、前身頃に一列のボタンが付けられます。普段着用の色は黒ですが、結婚式などのお祝いの場合は赤や金色のものを着用するそうです。
チョッキ(コリットゥ/コッソ/グロペッテ)
・ベスト同様に毛織物やビロードから仕立てられ、前身頃に一列のボタンが付けられます。
ジャケット(ズィッポーネ/コリットゥ)
・ビロードや絹のブロケード(金襴、銀襴などの豪華な生地のこと)などの輸入生地から仕立てられ、胸と袖に金のボタンが付けられます。
ズボン(カルツォーネス)
・白い綿もしくはリネン製の、幅広のズボン。長さは膝丈と踝丈の二つのタイプがあります。
スカート(ラガス/カルツォーネス・デ・フレーシ)
・オルバーチェから仕立てられる黒くて短いスカートで、ズボンの上から着用します。
脚絆
・ズボンの上から巻きます。黒いオルバーチェから仕立てられるので、この脚絆を巻いた様は遠目からだとブーツを履いているように見えます。
更に、時と場合と職業によって以下のものを着用します。
フード付きジャケット(カッポッティーヌ)
・黒いオルバーチェ製で、裾の内側には黒いビロードが飾られます。
ロングコート(ガッバーヌ)
・これまた黒いオルバーチェ製で、フードが付けられています。また、ベンツ(裾に入れられた切り込みのこと。ただし、スリットのように装飾目的ではなく、動きやすくすることを目的に入れられた切れ込みが起源になっています)も入れられています。
→カッポットゥ・セレニーク
・島の南部でガッバーヌの代わりに着用される、フード付きのダスターコート(ホコリ除けのためのコート)です。柔らかな毛織物から仕立てられ、ビロードと刺繍による縁取りが施されています。
マント(サック・ド・コルベリ)
・二枚の長方形のオルバーチェを縫い合わせて作られ、特に作業着として用いられます。
他に、子羊か羊の毛皮製の、羊飼い用の袖の無い服などもあります。
次は、女性の民族衣装について。ですがまず、キリスト教以前のサルデーニャの宗教についてさらりと触れさせてください。
遥か昔、サルデーニャでは豊穣を祈願して太陽が敬われていたそうです。また、子孫繁栄と絡んだ地母神崇拝も存在していたのだとか。
豊穣と子孫繁栄。この二つの象徴となりうるものが、人体には(と、言っても女性だけにですが)備わっています。そう、乳房のことです。
かつての信仰の名残は現在でも残っています。たとえばサルデーニャでは男女を問わず、胸元に金属製の乳房型のブローチを付けたり、袖口に大きな乳房型の鈴を付けたりします。これらは豊穣や子孫繁栄のシンボルであり、お守りでもあるのです。そういや古代ローマには、チンチンナブルムというアレを模したお守りがありましたね。
そういうわけでサルデーニャにおいて胸が豊かで美しいことは誇りであり、母親となる能力を備えていることの証でもあります。となると、民族衣装でも(特に未婚の場合は)そこを強調するようになり、ボディス(パーラ/インブーストゥ/コッソ)が最も重要なパーツとなります。一部地域では、ビキニのような布で胸を吊り上げる、ということもしているそうです(かなり極端な例です)。もっとも、既婚の場合はもはや胸を強調する意味はないため、簡略化されていることも多いそうですが。
サルデーニャの女性の民族衣装の他の要素は、概ね以下のようになっています。
被り物
・被り物には沢山の種類があり、沢山の呼び名があります。また、被り方も様々で、二枚以上の布を用いることもあります。
ブラウス(カミ―サ/カミーヤ/リーンツァ)
・白い綿かリネン製の、ゆったりとした丈が長いブラウスです。襟には襞が寄せられていて、胸はレースや刺繍で飾られます。袖口は金か銀のカフスボタンで留められます。
ベストもしくは胴着(ズィッポーネ/コリットゥ)
・綿ビロードや絹など高価な布から仕立てられます。丈の長さは様々で、袖はぴったりしていたり、そうでなかったり様々です。乳房型の銀のボタン(ブットネーラ)をカフスに飾る地域もあります。
スカート(トゥーニカ/ファルデッタ/ムンネッダ)
・ゆったりとした丈長のスカートで、優雅な雰囲気を漂わせます。材質はオルバーチェや他のウール、更紗など様々です。裾を縁飾りやリボンで飾ったりもします。
エプロン(フラーンダ/パンネッル/アンタレーナ/ファールダ)
・オルバーチェ、絹、チュールなど様々な布から仕立てられます。形はほぼ一定ですが、丈は様々です。
履物(イスカールパス)
・色は栗色か黒ですが、革の上にブロケードや刺繍をした布を張ったりもします。ヒールは低めで、靴底に鋲を打った踝までの高さのブーツ(ボッティーノス)もあります。
ところで、ブラジルにはボッキディウム・チンチンナブリフェルムという学名の虫がいるんですよ! 皆さんご存じでしたか? いい響きですよね、ボッキディウム・チンチンナブリフェルム!
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