ヨーロッパ その⑫スイス
今回はスイスの民族衣装についてです。とはいうものの、実は「スイス語」や「スイス民族」というものは存在していないのですが。スイスは26の州からなる連邦共和国で、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語がそれぞれ公用語とされている多民族国家です。そのため、州ごとに生活様式や気候に適した、様々な民族衣装が存在しています。
しかしやはり共通する傾向はあるようで、湖水に近い地方の民族衣装は色やデザインともに多様なのだそうです。また、スイスの民族衣装は歴史(詳しくはググってください)を反映し、過去のヨーロッパで流行していた要素、つまり「なごり」がみられるのだとか。特に男性の民族衣装はその傾向が顕著なのだそうです。
スイスの男性の民族衣装は一般的に、ジュストコール(長上着)+半ズボン+白く長い靴下+靴下の上にリボン飾りorガーター留め+短靴or小さな房飾りがついたパンプス(*)で成り立っています。このうち、ジュストコールは17世紀末から18世紀にかけて着用されていたものです。それに半ズボンですから、ほぼほぼ数百年前のヨーロッパの宮廷の男性の服装なのです。もっとも、かつての宮廷人のものよりは、装飾は少ないでしょうが。
*パンプスとは、本来は穿き口が大きく開いた革靴を指す名称であり、女性用の靴のみを指す名称ではないそうです。
他のなごりとしては、山地に近い地方の半ズボンに入れられているスラッシュが挙げられます。スラッシュとは15世紀後半のスイスの軍隊(スイスはかつては歩兵の強さで知られており、傭兵として多くの戦争に参加していました)で、動きやすくするためにきつく締めていた肩や肘の関節の部分に切れ目を入れたことに由来する装飾スタイルです。スラッシュはその後、ドイツの軍隊や商人を介し、50年ほどでヨーロッパ全土に広まりました。かつてのヨーロッパの人々は、裏地や下に着た衣服、肌を見せる目的でスラッシュを入れていたのです。
スラッシュの他のなごりとしては、北東部シャフハウゼン州の16世紀スペイン風の詰め物がされたオー・ド・ショース(トランクホーズ)も挙げられます。オー・ド・ショースホーズとは16世紀から17世紀にかけて着用されていた、キュロットの原型となる緩やかなズボンのことです。
お次はスイスの女性の民族衣装について。
女性の民族衣装も男性同様に州ごとの特徴があるようですが、一般的にはシュミーズ+コルサージュ(胴着)+プリーツスカート+被り物+装身具+靴や靴下で成り立っているようです。あと、エプロンを付けたり付けなかったりもするようですが。シュミーズの袖は短く膨らんでいて、襟は襟元まで詰まっています。スカートは、山岳地帯では丈が短く、平地では丈が長いのが普通なのだそうですが、これは動きやすさを考慮してのことでしょう。他、上記に加えてスタマッカー(胸当て)を付ける州もあるそうです。
伝統的な装身具には、首飾りや髪飾りなどがあります。首飾りには長く細いものと、「神の子羊」と称される大きな銀のメダルを吊るすものがあります。髪飾りとしてはリボンやヘアピン、リネンのスカーフなどが用いられます。
被り物も州ごとに違うのですが、特徴的なものをいくつか述べていきます。
まず、南西部のヴァレー州ではリボンの飾りが付いた、縁の折れ曲がった小さな麦藁帽子を被ります。この麦藁帽子は形は統一されているものの、リボンはレースだったり金糸が織り込まれたものだったり様々なのだとか。でもどちらにせよ、とてもかわいいのでしょうね。あと、北東部の基礎自治体アッペンツェルでは、二枚の蝶の羽が鶏冠のように高くなった、黒い紗張りの帽子が被られているのだとか。
また、コワフという小さな黒いサテンの帽子を、被るというより頭の頂に載せるところもあります。このコワフの他に、頂点に毛糸の束を結んだ縁なし帽や金や銀のラメ布のボンネットを着用することも。
帽子に用いられる色にパターンがある地方では、着用者の身分が折り返しの部分の色に反映されていたのだとか。平民は黒い布、貴族は色布の折り返しの帽子を着用していたそうです。
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