ヨーロッパ その⑬オーストリア

 今日はカンガルーとコアラ……ではなくて芸術と文化の国オーストリアの民族衣装についてです。オーストリアは国土のほぼ三分の二をアルプス山脈に占められています。他にはハプスブルク家が建てた壮麗な建築物が有名ですね。

 オーストリアもまた周辺諸国のように民族衣装には地域差があります。今回は、絵のように美しい自然で知られる、山岳地帯チロル地方の民族衣装について述べていきます。


 チロル地方は山岳地帯なので、チロルの中でも谷ごとの特徴があるそうです。ですが一般的にはシャツ+上着(沢山の金属のボタンが付いている)+ズボン+サスペンダー+大きな金属の留め金が付いたベルト+白くて長い靴下+革靴+帽子+赤いシルクのスカーフで成り立っているのだとか。

 上着はウール製で、靴下も毛糸から仕立てられます。他に、これまたウール製の「ヨッペ」と称される厚手で丈が短いチュニックのようなジャンパーが着用されることもあるそうです。ヨッペの下に着用するシャツは、明るい赤か模様入りの綾織りの布から仕立てられた、チョッキに似たもので、ブルストフレック」と呼ばれます。

 ズボンはウール製で丈が長いものと、ウールもしくはアルプスカモシカの革から仕立てられる膝丈のものに分けられます。膝丈のズボンは更に、丈が極めて短いものと、膝の下ぐらいまではあるタイプに分けられるそうです。そのズボンを吊るすサスペンダーは幅広のチロリアンテープ製や赤いダマスク織のもの、はたまた茶色い革製のものなどがあるそうです。ベルトは黒い革製で、幅が14cmから19cmと広く、刺繍が施されています。ベルトとサスペンダーはチロル地方の民族衣装の特色の一つなのだそうです。


 チロル地方はサスペンダーとベルトのみならず、帽子もまた特徴的です。チロル地方で被られる帽子はいくつかのタイプに分けられるのですが、まずはその名もずばり「チロリアンハット」について述べていきます。

 チロリアンハットとは一般的には濃い色(濃い緑や濃い茶褐色など)のフェルトから作られる、つばが狭く、リボンが結ばれた帽子のことを指しています。リボンの結び目には羽毛や、シャモアの背中から首にかけて生えている毛をアクセントとしてあしらいます。祝祭日用のチロリアンハットには、花のコサージュや鮮やかな色のリボン飾りも付けられるそうです。

 チロル地方の山地では、「ファツェルカペ 」と称される円錐形で幅広の縁がついた帽子が被られています。この帽子は黒いフェルト製ですが、緑の絹の裏地が付けられています。また、ヨーロッパオオライチョウの羽やアルプスの花、前述のシャモアの背中から首の毛が飾られるそうです。


 お次は女性の民族衣装について。

 チロル地方の女性の民族衣装は白い木綿のブラウス+ボディス+スカーフ+ウール製のゆったりとした黒いプリーツスカート+紺色のエプロン+靴下と靴で構成されています。他に、チロリアンハットを被ったり被らなかったり、「ゴーレル」と称される首から肩までを覆う襞襟飾りを付けたりするそうです。上記の他に、若い女性ならば小さな花冠をしたり、年配の女性ならば羊毛で編まれた紺もしくは黒い縁なし帽(時々三角に高く盛り上がる)を被るそうです。

 ブラウスの袖は膨らんだ「パフスリーブ」で、レース製の襟が付けられます。スカーフは鮮やかな色合いなので、ブラウスの白との対比が眩しいですね。ちなみにチロル地方では、鮮やかな色が好まれるそうです。

 このブラウスは祝祭日には総レース製になり、袖口にはラッパのようなフリルが付けられるそうです。ますます華やかでいいですね。他、晴れ着として縁が広く山が低い毛皮の帽子を被る風習もあるそうです。

 

 

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