ヨーロッパ その⑩オランダ

 今回はオランダの民族衣装についてです。

 オランダの民族衣装で最も特徴的なのは、首都アムステルダム近郊の基礎自治体(行政区画で最小の単位で、首長や地方議会などの自治制度があるもの)エダム=フォレンダムのフォレンダム地区。及び北ホラント州のワーテルラント基礎自治体のマルケン村のものと言われています。というわけで、以下では主にフォレンダム地区とマルケン村の民族衣装について述べていきます。まずはフォレンダム地区の、男性の民族衣装について。


 フォレンダム地区の男性の民族衣装は、打ち込みがしっかりした(=経糸と横糸の本数が多く、糸の密度が高く丈夫な)ウール地もしくは起毛した布から仕立てられます。

 ベストはV字型に開いていて、色は赤もしくは下記のもう一つのベストと同じです。その下には、赤と白の縦縞の、リボン飾りがついた立襟のシャツを着用します。

 もう一つのベストはウエストあたりで打ち合わせ(衣服の明きが重なる部分)をダブルブレステッド(詳しくはググりましょう!)にした、丈が短いものです。襟は低く(そうすると首が長く見えます)、外側に折り返っています。色は黒か濃紺なので、銀色のボタンが映えます。加えて、同じような色のジャケットも着用します。ズボンはやはり黒か紺色で、丈が長くたっぷりとしたタイプです。また、フォレンダムの男性の民族衣装は、上下ともに同じ布から仕立てられます。他、盛装の際はロングのコートを羽織り、ネックレスを着用します。

 

 フォレンダムの女性の民族衣装でもっとも目を引くのは被り物です。被り物はオランダ全土の民族衣装の特徴なのですが、フォレンダムのものは他とは一線を画しています。この「ハル」と呼ばれる被り物は、白いレースから作られていて、刺繍も施されています。形は様々ですが糊が効いていて、とんがり帽子のような形をしています。また、両サイドには翼のような部分が付けられています。特別な日は、普段使いの黒い円錐形の帽子の上にこのハルを重ねるそうです。

 フォレンダムの女性の民族衣装の上衣は黒の半袖のジャケットで、胸元に角形の刺繍襟を垂らします。肩から前後には房付きで刺繍を施されたベルトを掛けます。下は黒もしくは濃い色のくるぶし丈のロングスカートです。そのうえに、縦縞の木綿地のオーバースカートを着用します。そして盛装の際は、前に金の留め金がついた珊瑚のネックレスを着用します。


 お次はマルケン村の民族衣装についてです。まずは男性の民族衣装について。

 マルケン村の男性の民族衣装は極めてシンプルで、唯一の装飾品は銀製の円盤型の留め金、もしくは金色のホック留めなのだそうです。マルケン村の男性の民族衣装は茶褐色のベストもしくはジャケット、その下に着用する赤いシャツ、膝丈のズボン、ウールの長靴下と木靴サボもしくは革の短靴、そして黒い帽子になります。

 ベストはしっかりとしたウール製で、ジャケットはダブルブレステッドで打ち合わせが深く襟が低い、金色のボタンを二列付けたものです。ズボンはニッカーボッカーズタイプの幅が広い、だぶだぶしたものです。

 こういったズボンはオランダの民族衣装の特徴の一つでもあり、現在でも英語でニッカーボッカーズとは「オランダ移民」という意味を有するそうです。靴下は暗褐色もしくは紺色で、ズボンにつながるように穿きます。帽子は普段は海員風のものですが、日曜日や祭日などで盛装する際は鍔のある高い帽子を被るのだとか。また、その際は服の上下も黒にします。ちなみになぜ帽子が海員風なのかというと、マルケン村はかつては島で(現在は陸続きになっている)、漁業が盛んであるためでしょう。

 近年では、普段着として丈が短いゆったりとしたシャツや、膝丈のたっぷりした労働用のズボンも着用されているそうです。


 マルケン村の女性の民族衣装は非常に特徴的です。中でも最も特徴的なのは、フォレンダム同様被り物です。

 オランダの他の地域の民族衣装ではほとんどの場合、頭髪は金もしくは銀製のヘルメット型の帽子に収めます。そして被り物を付けるのですね。しかしマルケン村の場合は頭髪は左右に自然に垂らします。そして、レース地もしくは柄物の小さい帽子を被ります。この帽子の左右には長く太い付け毛が垂れ下がっているので(額に当たる部分に短くカットしたものや、後ろにカールした毛が付けられることも)、とても目を引くのです。

 マルケン村の女性の民族衣装の上衣は、袖なしのボディスです。このボディスには豪華な刺繍が施された、手間暇をかけて入念に仕立てられたものです。そのため、代々受け継がれていくのだとか。ボディスの下には縦縞の長袖のシュミーズを着用するそうです。

 下はくるぶし丈のギャザースカートかゆったりとしたプリーツスカートになります。どちらも色は暗く、裾に赤褐色もしくは青の縁飾りが付けられます。材質は主にウールですが素材が異なるスカートを重ねて穿くこともあるそうです。上下のスカートの丈をわざと変えることもあるようで、その場合上は縞柄の、下は濃紺のものを着用するのだとか。これらスカートの上の、ウエストの部分にはベルト状のフリルを飾ります。このベルトはボディスの下で肩から吊るして着用するそうです。

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