ヨーロッパ その⑨ブルガリア

 今回はヨーグルト……いえ、薔薇の国ブルガリアの民族衣装についてです。

 ブルガリアは国土の中央に東から西へとバルカン山脈が走る、国土の三分の一を山岳地帯が占める国です。また、有名な「薔薇の谷」もバルカン山脈の南に位置します。この山がちという地理的特徴は、ブルガリアの民族衣装の多様性の保持に役立ったそうです。しかし各地域に共通した特徴もあります。金属の装飾品を身に着けることです。では、以下で早速詳細を見ていきましょう。まずは、男性の民族衣装について。


 ブルガリアの男性の民族衣装は、以下に列挙するもので構成されています。


シャツ:麻製で丈長の、裾が広がったチュニック風。裾はズボンにインします。

外衣:袖のないチョッキ風のものや、防水の毛織物製の丈長のフード付きのもの(おパンジャックと呼ばれる)は、多くの地域で着用されています。また、染色をしない羊の毛皮のジャケットは寒冷な山岳地帯で着用されています。

ボレロ:祭事の際に着用する羊毛製のものにはアップリケや刺繍で豊富な装飾が施されます。

ズボン:くるぶし丈で足の部分がぴったりしたものや、膝丈で幅が広いものがあります。どちらのタイプも上部は紐で締めるそうです。

腰帯・ベルト:腰帯の長さはウエストを数周できるぐらい。柄は無地あるいは縞柄の、幅広の布製。もしくは細いニットタイプまで、種類は豊富です。また、四隅に豊富な装飾を施したハンカチを腰帯もしくはベルトに巻き込みます。

脚絆ナヴォイ:白い毛織物のゲートルです。かつては女性もこれを使用していたそうです。

履物:「ツルヴァリ」と呼ばれる一枚皮でできたボート型のサンダルで、細い紐で足に結び付けて履きます。

被り物カルパック:円筒形の、黒い毛皮の帽子を被ります。


 次は女性の民族衣装について。

 ブルガリア全土に分布している女性の衣服の形式は「スモック」や「スクマーン」と称されるチュニックタイプの重ね着になります。


 スモックはスクマーン(後述)の下に着用する、ワンピースタイプのチュニックです。亜麻布から仕立てること(綿布製のものもあり)と、直線で裁断することは、古い伝統を受け継いでいることを表しています。また、縫い目を飾るという初期的な装飾も施されています。スクマーンを着用しても見える部分(裾など)は豊富な刺繍や、レースで飾られています。

 スクマーンは古代ギリシアのトゥニカ(袖なしの下着)から派生した、極めて由緒正しい民族衣装です。材質は羊毛で、特徴は名称の由来でもある側面の切り替え布で、以下の二つのタイプに分かれます。ちなみに切り替えは大きく高いタイプから低いタイプに変化したそうです。


①ヴィソコクリィネスト・スクマーン

 大きな切り替え布を入れたスクマーン。長方形もしくは不等辺四辺形の大きな切り替え布が脇の下から両脇に、いっぱいに付けられています。

②クゥソクリィネスト・スクマーン

 短い切り替え布のスクマーン。ウエストから下に切り替え布が付けられます。


 他にスカートに該当する部分が襞付きになっているタイプもあるようです。

 袖についても袖なしだったり半袖だったり、長袖だったり色々です。長袖は肘の上まで切り込みが入っていて、下のスモックが見えるようになっています。

 スクマーンは縁に装飾が集中している変種もあり、祭日用や外出用のものには沢山の刺繍がされています。リボン状の手織布がはぎ合わされているものもあります。

 スクマーン及び後述のエプロンの刺繍の図案は幾何学文様、モザイク風、大きな輪郭の花のモチーフなど、地方によって様々です。ただし、イスラームの影響なのか動物のモチーフは見られず、人物文様も非常に変形され抽象化されているのだとか。


 他のブルガリアの女性の民族衣装の構成要素には、以下のようなものがあります。


エプロン:エプロンはかつては普段は付けることはなかったそうです。しかし儀礼用として用いられるようになり、やがて装飾の中心となったのだとか。

靴下:多彩の色使いの毛糸の編み込み模様の、かかとのないもので、男性の脚絆に対応するものです。

履物:羊のなめし革製の、モカシン型(一枚革製の、足を包み込むような構造の靴のことです)の靴です。

腰帯・ベルト:腰帯とベルトはスクマンを着用するにあたって欠かせないもので、別々もしくは共に使用されます。これらは古くは着用者の年齢や着用者を表していて、例えば手織りの堅い生地製のものは既婚女性の証だったそうです。

頭飾り:頭飾りは自然から入手できる羽根、樹皮、種などから作られます。後頭部もしくは耳の上には花飾りも付けられます。

被り物:ビーズや効果、人工の三つ編み、花輪、人工の羽根がついた重いものです。ちなみにブルガリアの女性の伝統的な髪形は、何本かの三つ編みを頭の後ろで一緒に束ねるというスタイルです。

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