ヨーロッパ その⑥ハンガリー

 今回はハンガリーの民族衣装についてです。ハンガリーの民族衣装といえば刺繍が美しいことで知られています。

 ハンガリーの刺繍にはいくつか種類があります。ですがその中でも首都ブダペストから約120kmほど東に位置するマチョー地方の刺繍「マチョー刺繍」と、最大の県であるバーチ・キシュクンの、ブダペストから約120kmほど南に位置する町カロチャやその周辺の刺繍「カロチャ刺繍」が知られています。これらの刺繍は民族衣装のほかテーブルクロスや枕カバーなどの日用品にも施されている、ハンガリーの方にとっては身近なものなのだそうです。現代日本においては、日本刺繍が施された小物を持っている人間の方が少ないでしょうから、ハンガリーが少し羨ましい気もしますね(現代日本における日本刺繍の「遠さ」は、伝統的な日本刺繍は絹糸を用いるため洗濯が難しいどころか、専門店に頼まないといけないという事情も絡んでいるかもしれませんが)。


 ハンガリーの刺繍は革を縫い合わせる際に色糸を装飾として用いるようになったことから始まり、ルネッサンス期のイタリアやトルコ、オーストリアから影響を受けたといわれています。イタリアからは技法面で、トルコ(チューリップや薔薇の模様)やオーストリアからはデザイン面で影響を受けたようです。


 では以下で本題に入りますね。ハンガリーもまた日本と同じように、日常生活において民族衣装を着用することはありません。しかし農村の祝祭時や、ハンガリー系の民が暮らすルーマニア北西部トランシルヴァニアのセーケイ村においては普段着としてみられるそうです。なお、同じくトランシルヴァニアのカロタセグ地区イナクテルケ村のハンガリー系住民の未婚の女性の民族衣装は、ほぼ一面に刺繍によって美しい花や模様が描かれ、その上さらにビーズ刺繍によって華やぎを添え、極めつけは真珠で作った冠状の髪飾りパルタ(これには幅広のリボンが背中を覆うようにつけられていて、さらにそのリボンにもぎっしりと刺繍を施す)を付けるという、絢爛豪華でありながらぬくもりを感じさせるものになっています。

 ほかにも、ハンガリーの民族衣装は場所によってさまざまな特徴がありますが、逆を言えば服のデザインそのものにおいては「これこそがハンガリーの民族衣装の必須アイテム」という共通した特徴はないように思えます(男性はズボン、女性はスカートを履いて~といった、ヨーロッパの他の国の民族衣装と広く共通した部分はもちろんありますが)。ハンガリーの民族衣装の最大の特徴はやはり、現在では世界中で親しまれつつある美しい刺繍なのでしょう。


 ……ハンガリーの回はこのまま終わることもできるのですが、それだと文字数的にさみしい気がするので、以下では薔薇の香りについて述べていきます。なぜかというと、私が薔薇が好きだからです。


 巷には薔薇の香りの〇〇というのがあふれていますが、実は薔薇の香りの種類は七つから九つに分類することができます。そして多くの品種においては(香りがあるものならば)それらのうち幾つかがミックスされた香りを放ちます。

 また、薔薇においては香りの強さと花保ち(=どれほど花の美しさを維持していられるか)や耐病性はおおむね・・・・反比例します。そのため花屋さんのショーウインドウに並んでいる薔薇には、香りが全くないものもあったりするのです。もっとも世の中には、めちゃくちゃいい匂いがぷんぷんするけど花保ちがいいという、人間でいうと勉強もスポーツもできる優等生みたいな薔薇も存在していたりするのですが。

 たとえばティー(その名の通り紅茶の香り。私はこの匂いが薔薇の匂いで二番目に好きです)やパウダー(これまたその名のとおり、粉っぽさを感じる香り)の薔薇は、香りが強くても花保ちがいい傾向にあります。反対にダマスクという、典型的な薔薇の香りの薔薇は花保ちが悪い傾向があります。また薔薇の匂いは、開ききってしまえば以降は弱っていくものでもあります。皆さんいつか大切な方に薔薇の花束を贈ることがあったら(もしくは創作において薔薇を贈るシーンを書くことがあったら)、上記のことを参考に選んでみてくださいね。なお私はミルラ香という、蜂蜜の甘さに爽やかさを足したような香りが一番好きです(←それがどうした)!

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