ヨーロッパ その⑤チェコとスロバキア

 今回はチェコとスロバキアの民族衣装についてです。この二つの国は1993年に「円満離婚」するまでは一つの国でした。また共にスラヴ系民族の国であるため、文化的にも似通った所があります。

 現在のチェコの西側約半分を占めたボヘミア王国。その首都であり現在でもチェコの首都であるプラハは中央ヨーロッパ初の大学が設立され、「黄金のプラハ」と謳われた、歴史とロマンある都市でもあります。

 あとはフス戦争とか色々あって、チェコとスロバキアはハプスブルク家に支配されることになりました。現在でも受け継がれている民族衣装は、ハプスブルグ家の宮廷の華麗な服飾の影響を受けたものなのだそうです。逆にチェコとスロバキアの民族衣装が宮廷衣装に影響を与えたこともあったのだとか。


 チェコとスロバキアの民族衣装の特徴は以下の通りになります。


 ・色彩、デザイン、装飾品が豊富

 なお、西に行くほど簡素なデザインで色を抑えたものに、東に行くほど凝ったデザインで色鮮やかなものになる傾向があるそうです。またスロバキアの民族衣装は、ビザンツやトルコの影響により東洋的になっているのだとか。

 衣服の装飾については、縁飾りが袖口や襟元、スカートなどに入念に施されます。これは現代においては装飾としての意味しか有していないのですが、遙か昔には衣服の開口部から忍び込むとされる悪霊を遠ざける、魔除けとしての意味を有していました。そのため開口部を飾るレースや刺繍のデザインは蔓草や花など「生命」を有しているものから採られているのだそうです。


 ・レースや刺繍を男女共に使う

 レースについては、アイレットともオープンワークとも呼ばれる、目打ちなどで布に穴を開け、その周りを糸でかがる技法がボヘミアのレースの特徴として挙げられます。レースというとどうしても糸を編んで作るタイプのものをイメージしがちですが、こうした布に刺繍をしたりするタイプもレースなのです。


 ・服の構造に工夫がある

 言うまでもなく地方差があるのですが、代表的なものを以下で見て行きましょう。まずは男性の民族衣装について。


 一般的にチェコとスロバキアの男性の民族衣装は白いシャツ+ベスト+ジャケット+ズボン(チェコでは膝丈でぴったり、スロバキアではふくらはぎ~足首まででゆったりしている)+膝丈の靴下とブーツ+帽子となっております。帽子はスラヴ系に特有の毛皮の帽子だったり、ソンブレロに似たタイプだったりします。地域によっては帽子に羽や小花の束を飾ったりします。

 他にも地方によって、


 ・ベルトのバックルに刺繍した革を付けたり、首にカチーフ(主に頭を覆うために使われる、正方形の大きな布のこと。ハンカチもカチーフの一種である)を巻いたりする

 ・前開きのコートを羽織り、胸にチロリアンテープ(チロル地方を起源とする、民族調の刺繍が施された装飾用のリボンのこと)を飾る(チェコ西部のプルゼニ州)

 ・ベストが極端に短い。また、シャツも胸の上部を覆うだけと、極端に丈が短い(スロバキア南部のデトヴァ村)


 など、様々です。

 またスロバキアではズボンにも刺繍が施されるのですが、そのズボンのいわゆる社会の窓は蓋状で前に下ろせるようになっているそうです。そうしてそこに、愛する女性から贈られた刺繍入りのハンカチなどを挟みこむのだとか。


 お次は女性の民族衣装について。一般にチェコとスロバキアの女子柄の民族衣装は白いブラウス+下着用のブラウス+ベスト+スカート+ペチコート+被り物+飾り用の衿+前飾りのリボン+ギャザーエプロンなどで成り立っています。被り物はボンネットに帽子、カチーフ、三角巾など様々です。

 特筆すべきなのはスカートの構成で、前と後ろの二枚の布から成るスカートを穿く村があります。ただし、上にスカートを覆うほどの丈があるエプロンを掛けるので、つなぎ目が見えるのは民族舞踊の時ぐらいなのだそうです。


 

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