ヨーロッパ その④ポーランド

 今回はポーランドの民族衣装についてです。ポーランドはその歴史から(ポーランド分割とか、他にも色々あったのです)、近隣諸国の影響を受けつつ、伝統文化を今日に至るまで継承していきました。現在でも祝祭日など特別な行事では、民族音楽をBGMに、民族衣装を纏った人々が民族舞踊を踊ったりするそうです。


 では以下で、ポーランドの服飾に影響を及ぼした国について述べていきましょう。まずはトルコ……というかオスマン帝国ですね。ポーランドは十五世紀頃から、トルコの服飾の影響を受けたそうです。

 現代の地図だけ眺めたら意外な関係かもしれませんけれど、十五世紀といえば世界史のビッグイベント・コンスタンティノープルの陥落が起きた世紀でもあります。また、オスマン帝国の最盛期の君主スレイマン一世が寵愛した妃のロクセラーナ(=「ルーシの女」の意)ことヒュッレムは、当時はポーランドの一部だったウクライナ出身です。

 オスマン帝国はポーランドにカフタンとジュパーン(上着)を伝えました。これらのうちカフタンは名称こそ変わったものに、現在でも男性の礼服として受け継がれているそうです。

 あとは十八世紀末のロシア、プロイセン、オーストリアによる分割を機に、地図から名前が消えたポーランドの各地域は、それぞれを統治する国の影響を受けることとなりました。そうして、かつてプロイセンとオーストリア領だった地域では、手紡ぎと手織りの伝統は失われました。しかし、ロシア領であった所の一部では、手織りを用いた民族衣装が受け継がれているそうです。また、ポーランドの民族衣装は、かつては自然のままの(=染色をしない)生地から仕立てるのが基本だったのですが、時の流れとともに染色された布も用いるようになったそうです。


 では、そろそろ本題に入ります。ポーランドの民族衣装の素材は麻や綿、ウールです。冬物には革や毛皮も用います。

 デザインは、前述のような経緯で地方差がありますが、中でも東中部のマゾフシェ県(首都ワルシャワが位置する県でもあります)や隣接するウッチ県の都市ウォヴィチは、男ならばズボン(特に半ズボン)に、女ならばスカートとその上に付けるエプロン(短めでギャザーが寄っている)に縞模様が目を引く生地を用います。

 他には、男性の場合は黒の丈長のコートを着用します。ただ、婚礼や祭礼の際は、白の直線裁ちになるそうです。ポーランドの男性用のコートは生地もしくは型の特徴により、それぞれの地域で固有の名を持っているのだとか。また、女性であれば外出の際は更に縞柄のケープやショールを纏うそうですから、ますます縞模様づくしですね。

 男性の民族衣装で他に特徴があるものといえば、南部マウォポルスカ県(「マウォポルスカ」とは「小ポーランド」を意味します)の歴史ある都市クラクフのものでしょうか。

 クラクフの男性用の民族衣装は青の丈長の袖なしのコート+白いウール製のスモック風の長袖シャツ+赤と白の縦縞のゆたりしたズボン+黒いブーツ(ズボンの裾をインする)+子羊の毛皮で縁どった帽子となっています。コートには小さな襟が付いているのですが、この衿は袖ぐりや前身頃の端から続く縁飾りが施されています。更に、前裾の隅や胸部には刺繍も施されるという、華やかなものです。クラクフの民族衣装が豪華なのは、かつては首都であったという歴史を反映するが故でもあります。


 女性用の民族衣装で特徴的なのは、マゾフシェ県の東北に位置するクルピエ県の森林地帯、puszcza zielona(緑の森)とpuszcza biala(白い森)のものです。

 この二つの地域の女性の服装はリボンで縁取りされた無地のスカート+白地もしくは縞模様のエプロン+カフス+肩と衿に刺繍をした白いブラウス+袖なしでウエスト丈のボディス+スカーフ(普段用)などの被り物となっています。更に、気候や目的に合わせて袖付きのジャケットや丈を長くしたものを着用します。スカーフは頭を包む大きさに折り、後頭部で結びます。儀式の際はチウルカというティアラのような被り物を被るのですが、これはリボンが付き、花飾りや羽根が付けられた、とても華やかなものです。

 今回触れなかった地方のものも含め、ポーランドの民族衣装は見事な刺繍が施されていることで知られています。その中でも花嫁用の被り物は極めて装飾性に富んでいるのだそうです。

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