ヨーロッパ その②ラップランド

 今回はラップランドの民族衣装についてです。

 ラップランドとはスカンジナビア半島から、ロシア北西部ムルマンスク州のコラ半島にかけての、伝統的にサーミ人が居住している地域を指します。スウェーデン北部にも同じ名前の場所があったりするのですが。

 またラップランドは、サンタクロースが住んでいる場所ともされています。もっとも、サンタクロースのモデルとされている聖ニコラオスは、現在でいうとトルコにあったリュキア属州(ローマ帝国の一部)の生まれなのですがね。


 サーミ人はもともとは狩猟とトナカイの遊牧によって暮らしていたものの、現在では大多数が都市などに定住しています。

 上記のかつては遊牧生活を送っていたという事情により、ラップランドの民族衣装は防寒を最優先事項としています。じゃないと下手をしたら凍死しちゃいますからね。

 サーミ人の伝統的な衣服の素材はセイウチ、トナカイの毛皮が主でした。アザラシは肉を食べられるし、トナカイは服だけでなく他の道具の素材にもなりますから、ありがたい存在だったのです。そうした素材を、サーミの人々は服やブーツに仕立てました。

 サーミのブーツは爪先が上向きになっているのですが、これは雪に食いこまないようにするための工夫です。ついでに、サーミの人々はブーツを履いた状態の足首をリボンでぐるぐる巻きにするそうなのですが、これもまた寒冷地で生活するにあたっての工夫の一つなのでしょう。

 ちなみにサーミの人々はかつてアザラシを仕留める際、胸の部分を切り開いて内臓(とおそらく肉)を取りだした他は一切加工していない毛皮を頭からすっぽりかぶり、アザラシに擬態して接近していたそうです。


 またサーミ人の伝統的な衣服には、シャーマニズムの影響が強く残っています。サーミ人の衣服の背にあしらわれた緻密な織のリボンや、裾がそうです。リボンはラップランド特有のシャーマニズムの小道具を、裾は鳥の尾を表しているのだとか。

 男性の帽子は真上から見ると歪な四角形のような形をしているのですが、その四角は東西南北を表しています。あしらわれた草花模様のテープとトナカイと羊の毛は、花が咲き羊が戯れる草原を、鳥の尾羽のように付けられた赤と黄色と青のフェルトのリボンは明日の晴天を約束する虹を表しているのだとか。つまり全体的に、ラップランドの豊かな季節の景色を象徴しているのです。


 サーミ人男性の現代の民族衣装は、深い青のフェルト地に、緩やかなベル型で、裾にフリルが付いた立て襟の上着コルト。そしてズボンと、あと革製のベルトと前述のブーツと帽子となっております。コルトの裾や袖に様々な幅のリボンが縫い付けられていて、華やかです。コルトの前の開きは豪華な鉤ホックで留めます。

 サーミ人女性の衣服は、基本的には男性と変わるところはありません。ただし、コルトの衿が立て襟ではなく丸襟で、そして長いフリンジ(房飾り)が付く白い絹のスカーフを、その襟に巻き込むように羽織るのが盛装とされているそうです。また、女性はズボンを穿きません。


 

 

 

 

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