ヨーロッパ その①スウェーデン

 今回からはヨーロッパ編に入ります。まずは北欧のスウェーデンの民族衣装について、伝統がよく残っているという、中部のダーラナ県にあるレークサンドという自治体+ちょくちょく他の所の場合を例に述べていきます。


 スウェーデンの民族衣装、特に女性の場合は、キリスト教と密接な関わりを持っています。十七世紀~十八世紀には、衣服にするリネンは司教のいる教会から支給され、また服装の規則が教区の会議で決められていたそうです。それだけでなく司教は折々の説教で、伝統的な――言い換えると保守的な服装を順守するよう教区の住民に言い聞かせていたのだとか。

 教会は日曜日と祝祭日の礼拝や儀式に参加する際の衣服には特に細かく注文を付けていて、すると当然住民にとっても前述の日に着用する衣服は重要なものとなりました。

 他、衣替えの日までもがキリスト教の祭日と関係していて、夏の始まりと見做されていたキリスト昇天祭の日には、実際は凍えそうなぐらい寒かろうがジャケットなしで教会に行くのが決まりだったそうです。もっとも、あまりにも寒い場合はブラウスの下にジャケットを着用していたそうですが。なお、ジャケットの着用が許される=冬が始まる日とされていたのは、聖ミカエルの日だったのだそうです。


 そんなこんなで、教会によってガチガチに縛られていたスウェーデン女性の民族衣装ですが、レークサンドの場合は


①経糸は綿、横糸はウールの平織の、赤・白・黒の縦縞のエプロン

②前で紐で縛って留める、縞模様の手織りのベスト

③既婚の場合は白と黒の手織りのリボン付きの、未婚の場合は赤いリボン付きの、縁にレースが付けられた白リネンの帽子

④白のスカーフ(現代や、夏至祭の前夜祭では花模様あるいは格子柄入りも可)

 ↑①~④は教会歴によって変化する(特にウールのエプロンの色や帽子のレースは、祭日の等級によって変化する)

 ↓⑤~⑨は教会歴に左右されない

⑤白のブラウスと黒のスカート

⑥白のストッキング

⑦赤い赤いボンボン付きの黒い靴

⑧緑のジャケット

⑨腰に紐で下げるポシェット


 が基本的な衣服であり、通常の日曜日に着用される程度の晴着だったそうです。これが基本と言うことは、発展形があるんですね。たとえば①+②もしくは①+刺繍入りの赤いサテンのベストの組み合わせは、着用者がダンスもしくは宴会に参加することを示していったそうです。


 自給自足の時代にこうした衣服+休日用や教会用の衣服を揃えるのは無論大変なことで、かつてのうら若い娘たちは何年も働いて揃えていました。また、普段着は主にホームメイドの材料から自分たちで仕立てるけれど、晴着は買った材料を用いたり、あるいは訪問してきた仕立屋に任せることも多かったそうです。こうして集められた衣服は丁寧に保管され、世代を超えて受け継がれていたのです。


 お次は男性の場合について。男性の場合は、女性の場合のような、祭日による細かな規則はありません。


①丈が長い(地方によっては丈が短い)ジャケットと、濃紺に赤い縁取りのある刺繍入りのホックのあるコート

②赤い縁のある詰襟のチョッキ

③白いシャツ

④縫い模様の飾りがされている、カモシカ革の(時には布製の)半ズボン

⑤白いストッキング。そして膝下に留める、赤い毛糸のボンボン付きの、黒い革のバンド。

⑥黒い靴

⑦教会および祝祭日用の広いつば付の帽子。もしくは日常用の、メリヤス生地もしくは毛糸製の円錐型の帽子


 がスウェーデンの男性の民族衣装の基本になります。なお、④のズボンは「広い前開き」と「狭い前開き」の二つのタイプに分かれるそうです。

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