西アジア その⑤パキスタン
今回はパキスタンの民族衣装についてです。
パキスタンの民族衣装の基本形はシャルワールカミーズと呼ばれ、上衣カミーズ+下衣シャルワールで構成されています。また、この基本形は男女共通のものでもあります。このうちシャルワールは、トルコの回で述べたシャルワールと同じような感じですので、詳しい解説は省略します。ただ、パキスタンのシャルワールは男性用でも股の部分が空いていないそうです。
カミーズは丈を膝まで長く伸ばしたワイシャツのような貫頭衣です。裾の両脇には深いスリットも入っています。素材は、普段使いのものなら木綿35%、合成繊維65%のものがメインですが、晴着や正装用ではまた別の(もっと上等な)生地を用いるそうです。また、アフガニスタンのペロン・トンボンと同様にカミーズとシャルワールは同じ布から作られます。色は白やベージュなど淡いものが多く、柄は入っていないそうです。
また、カミーズ以外の上衣にはクルタがあります。クルタはインドの回で述べたものと同じ、立襟で長袖のゆったりとした衣服です。クルタはパンジャブ州~インド北東部にかけて分布する衣服なのです。というか、クルタと似たような上衣は、中央アジア一帯に分布しているのです。
パキスタンの民族衣装の基本形には、シャルワールカミーズの他にチャーダル(外衣)とショーカ(外套)があります。
チャーダルはアフガニスタンのチャパンと同じもので、同じ使用法をされています。ショーカは北部で用いられるウール製のコートで、アフガニスタンのチャパンの影響を受けているのだとか。
地域独特の民族衣装には、ルンギー(腰衣)とトピ(男性用の帽子)があります。パンジャブ州とシンド州の農民は一枚の布をズボンのように着付けて着用します。これがルンギーです。トピもまたシンド州などで見られる帽子で、この地域独特のミラーワーク(鏡の破片を用いた刺繍)で飾られています。また、トピの上からターバンを巻くこともあるそうです。
上記の男女共通の基本形は、そのまま男性の民族衣装でもあります。女性の場合は上記の衣服に加えてヴェールを被ったり、ガーグラというスカートを穿いたりします。また、上下で同じ布を用いるのは男性と同じですが、女性の場合は柄も色も豊富です。襟周りや袖の形、足首の周りのデザインも工夫されてもいるため、男性のものよりもずっと華やかになっています。部族によってはミラーワークや刺繍で裾近くまで装飾が施されている上衣もあります。
ちなみに、スカートは元々はロマから伝わったものですが、現在ではすっかり浸透していて、下にシャルワールを穿く、という着用法もされているそうです。
ガーグラはパンジャブ州とシンド州のボリューミーなロングスカートです。上述の二つの州は世界有数の綿の産地であるため、このような木綿をたっぷり使用したスカートが誕生したのだとか。また、ガーグラは地域、部族ごとに様々な染めや織りを用いているため、結果的に様々な柄のものがあるのだそうです。
実はパキスタンには、この国では非常に珍しい非イスラームの民族・カラーシャ族が暮らしています。カラーシャ族の男性は既にシャルワールカミーズを着用しているものの、女性は大人も子供も、赤や黄色の糸で幾何学文様を刺繍した、黒のウールの丈が長いワンピースという伝統的な格好をしています。彼女らの恰好で目を引くのはヘアバンド・シュシュットで、タカラガイ(豊穣多産の願いが込められている)、ビーズ、ボタンなどが縫い付けられていて、総重量500gにも達しますが、一日中着用しているそうです。
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