西アジア その②イラク

 今回はイラクの民族衣装についてです。

 イラクの日常用の衣服は、ディシュダーシャという長衣になります。

 ディシュダーシャは丈は足首まである長袖の、ゆったりとしたワンピース型の衣服です。こういった衣服は風通しがよく、汗をかいても早く乾きます。また内部に空気を含むため外部の熱を遮ることができ、なおかつ熱を放散する効果も併せ持つという、アラビア半島の気候に完全に適応した衣服です。

 ディシュダーシャはイラクの他のアラブ諸国でも着用されていて、衿や袖の形に各国の特色が現れているそうです。イラクでは男性ならばディシュダーシャにツブンと称される綿布製の上着を合わせ、ウエストで布製の帯を締め、更にその上にミシュラーという外套を羽織ります。ミシュラーは、色は黒か茶色で、ネックラインに金糸や銀糸で刺繍が品よく施されています。ミシュラーは多くはラクダか山羊の毛から織られた、通気性のよい布から仕立てられるのですが、絹で仕立てられたものもあるそうです。


 アラビアの気候・地理の特徴といえば砂ぼこりと強烈な日差し。この二つに身を晒すのを避けるためにも、イラク(というかイラクを含むアラブ諸国)では男性も被り物をします。それがクーフィーヤ(頭巾)です。

 クーフィーヤは要するに、アラブ圏の男性が被っている、輪状のバンドで押さえている布のことで、国や地域によって様々な呼称があります。色も様々。イラクでは綿布製で、白無地だったり、白地に黒のチェックだったりはたまた白地に赤のチェックだったりと部族によって色柄が違うそうです。

 上からイカール(上記の輪状のバンド)で押さえます。ちなみに、イラクの話ではないもののアラブの海岸地域や椰子が栽培される地域では、イカールを使わず後頭部で布を束ねるという着用法もあるそうです。


 イラク女性の伝統的な民族衣装には、アバヤという外套状の長衣があります。男性が羽織るミシュラーに対応するものがアバヤです。もっともアラビア語の口語では外套状の長衣は、男性用であっても女性用であってもアバヤと称されるのですが。しかし実際は、男性用のアバヤはビシュトもしくはミシュラーと呼ばれることが多いそうです。

 アバヤは薄い生地のゆったりとしたマントです。袖はないものの、たっぷりとした身頃が袖の役目を果たしてくれます。全身を包みこみ、なおかつ風通しがよいアバヤは、昼夜の寒暖差が激しいアラブの気候に適しているのです。ここらへんは、ミシュラーと同じです。

 また、しっかりと厚手に織られた布を用いたアバヤは、毛布や礼拝用の敷物の代わりとして、はたまたテントや穀物入れとしてなど、様々な使用に耐えることができます。まさしくオールマイティですね。


 アバヤの材質はミシュラー同様に毛製のものが多いようですが、絹や合成繊維製のものもあるようです。イラクの女性は外出する際には、アバやを普段着の上から被ります。そうして頭頂から下の身体全体を覆い隠すのですね。

 イラク女性はその他、頭部を覆うヒジャブ(詳しくは前回参照です)や、全身を覆うチャドルも着用します。チャドルと聴くと我々日本人は一般的には黒をイメージしがちですが、実際には花柄のものもあったりするそうです。またアバヤも刺繍などによって装飾が施されることがあります。

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