西アジア その①イラン

 今回はイランの民族衣装――というより、女性が被るヒジャブの種類と、あと文様について述べていきたいと思います。ではまずはヒジャブの種類について。


チャドル

・全身を覆い隠す長衣。語源は、ペルシア語の「大きな布」なのだそうです。その名の通り、直径が3~3.5mもある半円形で、幅広の布地を縫い合わせて作られます。素材は綿が多いけれど、近年は化学繊維も用いられているのだとか。

・色は、現代では黒が正式な色とされていますが、チャドル復活前は白や模様入りのものが好まれていたそうです。事実、本には礼拝の際には白を中心としたチャドルを着用する、という記載がありました。


マグナエ

・顔だけを出し、頭や首を覆い隠す筒状の布のことです。


ルーサリー

・大きな正方形の、髪を覆うスカーフ。三角形に折り畳み、顎の下で結んで着用します。


 以上でヒジャブについては終わりです。ですがこれだけだと寂しいので、私が最近読んだ「アジア・中東の装飾と文様」という本を参考に、古代~現代のイランの文様についていくつか述べていきます。


唐草

・蔓草が曲線を描いて連続する文様は世界中に存在します。ササン朝ペルシアでは更に自然の要素が取り入れられ、そうして生じたものが中国に伝来し宝相華(空想的な花文様)が生じたそうです。


葡萄

・葡萄は豊かな実りをもたらす生命の樹であり、ペルシアでは葡萄と柘榴を組み合わせた文様が使われていたそうです。


千花文様

・小さな花を一面に散らした文様です。


動物文

・古代エジプトやメソポタミアで太陽のエネルギーと結び付けられていたライオン、ビジュアルが強烈な象。切ってもまた生えてくる角が不死を表す鹿、太陽神の使いとされる猪。それに虎や馬(天馬)といった動物は、文様にもよく登場しました。ササン朝の文様には、首飾りを付けた羊という可愛らしいものもあるそうです。

・動物文の発展形? には、帝王や英雄が怪獣や動物と闘う狩猟文、北方のスキタイの影響を受けた(ライオンと牡牛などの動物が戦っている)動物闘争文があります。


双獣文

・一本の樹を挟み、二匹の獣(孔雀などの鳥のことも)が左右対称に向かい合っている文様です。中心の樹は聖樹であり、生命の樹でもあり、それを挟む二匹の動物は樹の守護者でもあります。


シームルグ文様

・シームルグとはペルシア神話に登場する鳥で、ササン朝において文様化され、以降王侯貴族の紋章として好まれていたそうです。


花喰鳥はなくいどり

・鳥が何かを咥えている文様を昨鳥文さくちょうもんといい、その中でも花の木や枝を咥えているものは花喰鳥というそうです。ちなみに、綬帯(印を帯びるための組紐のこと)を咥えている鳥は含綬鳥 《がんじゅちょう》というそうです。

・ペルシア起源の文様と言われていて、ササン朝時代には花や葡萄の樹の枝を咥えた鳥の文様が存在し、シルクロードの東西に広まったのだとか。


連珠文

・円(珠)を大きな円(丁度真珠のネックレスのように)を作るように繋ぎ、その中に何らかの図柄(例えば上記の猪の頭など)が描かれた文様。ペルシアで好まれた文様なのだそうです。


菱形文様

・水平、垂直の格子文を45度傾けると連続する菱形模様が出現します。古代エジプトの菱形文様はシンプルですが、ペルシアやイスラムの菱形模様は直線だけでなく曲線でも構成されていて、菱形の面影を留めていないものもあります。


渦巻・らせん

・渦巻文様は動的な意味を持ち、回転という運動と時間をもたらします。


文字文様、幾何学文様

・イスラムで特に発達した文様です。

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