東南アジア その⑥カンボジア
今回はカンボジアの民族衣装についてです。が、今回もまた服というより織物の紹介がメインになりそうです。
ところでカンボジアといえば、金色の絹が有名です。と、言っても金色というより黄色系の絹糸なんて、特に珍しくないような気がしますよね。絹なんて染めれば何色にもなります。が、カンボジアの金色の絹が特別なのは、繭の状態の時点で金色であることです(と、言っても蚕の原種であるクワコの繭は白ではなく黄色なのですが)。
カンボウジュ種という野生種の蚕が吐く糸は美しい黄金色をしています。この蚕の糸を利用した織物の技術は内戦の影響で一時途絶えかけたものの、どうにか耐え縫いて復活したのです。余談ですが、日本にも美しいエメラルドグリーンの繭を吐く天蚕(日本在来の蚕のうち、屋外で飼育されるものを指す)がいて、製品も作られているようです。恐らくすごく高価なのでしょうが、カンボジアの金色の絹も、日本のエメラルドグリーンの絹も、いつか購入してみたいものですね。
話しは少し逸れてしまいましたが、上記の黄金の繭から紡いだ糸をそのまま。はたまた染色したものから織りなされた布は当然高級品になります。
さて。カンボジアの織物の技法は、糸の種類によって様々な名称が付けられています。それでも大別すると「紋織」と「横絣(横糸だけに絣糸を用いた布)」に分かれるそうです。
紋織の代表的な布にはパムアンという、縦の糸と横の糸が違う色(例えば赤と青)で織られたものがあります。すると、前の例の場合だと完成した布は一見すると紫だけれど、角度によっては赤にも青にも見えるという、玉虫の羽のような美しさを醸し出すのです。なお、金糸や銀糸で花文様が織り込まれたパムアンはチョラバップと呼ばれるそうです。どちらも、いつかこの目で見てみたいものですね。
横絣は、精緻な綾織の技法で紋様を織りなします。綾織は斜文織とも称され、英語ではツイルと呼ばれます。縦糸、横糸の三本以上で構成されていて、糸が交差する所に斜めの線が現れるのが特徴です。
カンボジアの横絣の布は、身に着けるための「ホール」と、宮廷や寺院での宗教的な儀式の際にタペストリーとして壁に掛けられる「
ピダンは幅93cm、長さ2m弱の者が多く、紋様はナーガ(インド神話の蛇神。仏教には仏法の守護神・竜王として取り入れられている)をメインに寺院や仏陀、天女、霊船、供物、仏教ゆかりの動物、仏陀の前世の物語など、仏教的なもので占められます。なお、伝的な織物の紋様は多種多様だけれど、地域や信仰によってモチーフが異なるのだそうです。
上記以外の布としては、性別も年齢も問わず、幅広い層に日常的に用いられる長い布「クロマー」があります。クロマーは暑さ対策として、日差しを避けるため頭や首に巻かれたり、はたまた汗を拭くのに用いたり、水浴の際にはタオルになったりします。それだけでなく、お包みや抱っこ紐、風呂敷代わりにもなるそうですから、驚くほど便利ですね。なお、クロマーは青と白、赤と白などの格子柄が多いそうです。
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