東南アジア その②フィリピン・後編

 今回はフィリピンの民族衣装のうち、かつての宗主国であったスペインとアメリカの影響を受けたものについてご紹介していきます。が、結構な紆余曲折があり、かつてはあった特徴が、今では無くなっていることも多々あるようです。なので、あくまで現代まで残っている特徴について述べていきたいと思います。


カミサ

・スペイン統治時代に誕生した、刺繍を施したパイナップル繊維のブラウスのこと。


バロト・サヤ

・「ブラウスとスカート」を意味し、その名の通りカミサ(ブラウス)とロングスカートと、パニュエロ(ショール)と、タピス(スカートの上に付ける、巻きスカート)から成る衣服。幾つかの派生形がある。また、マルコス政権下で、ナショナルコスチュームに認定された。

→マリア・クララガウン

・1870年代、スペインの影響を受けて誕生した。名称は著名な小説のヒロインにちなむ。この形式では、カミサとパニュエロに刺繍を施したものが多い。

→テルノ

・アメリカ統治時代に誕生した、ワンピースやドレスのように見える、ブラウスとスカートの上下一式の衣服。テルノはスペイン語で「釣り合いのとれた」という意味を持つ。その名の通り、上下を同じ色、素材の布で仕立てるため、ワンピースのように見える。

・上述のように非常にドレスに似ていて、唯一の違いは袖がバタフライスリーブ(蝶の翅のような袖)になっているかどうか。バタフライスリーブだったらテルノとされる。

・素材はフシ(前回述べたアバカと絹、もしくはパイナップル繊維を混ぜて織られた布)、パイナップル繊維、シマナイ(アバカ繊維)など。

→キモナ

・ビサヤ諸島でよく見られる、地方色が強いスタイル。外国の影響を受け、1960年代に誕生した。短いブラウスをスカートの上に、かぶるように着用する。

・名称の由来は、国外から入って来たチュニックライン(チュニック丈と称される、膝上ほどでカットされた長い上着を着用したときに表れる、特有のシルエットのこと。上が縦長の大きな長方形、下が横長の小さな長方形になる)をキモナと称したこと。

・テルノとの違いは、バタフライスリーブではなく、キモノスリーブ(日本の着物から影響を受け、ヨーロッパで誕生した、肩と袖の切れ目や縫い目がない袖の形)が付いていること。


 さて。実は今まで述べてきた衣服やその特徴は、女性用になります。が、当然男性の民族衣装も存在するので以下でそちらについて述べていきます。

 フィリピンの男性の民族衣装は主に中国とスペインの影響が濃く、以下のような種類があります。


カミサ・デ・チーノ

・バナナ繊維もしくはシナマイ製のシャツのこと。軽やかかな、向こうが透けて見えるほどの生地には、刺繍が施されている。


バロン・タガログ

・タガログ風の衣装という意味で、バロト・サヤと同時にナショナルコスチュームに認定されている。長袖で襟付きのオーバーシャツタイプを基本とした(半袖の場合は略装と見なされる)、ピニャ、フシなどの天然繊維製の布に、カットワーク刺繍(図案に従ってボタンホールステッチを施し、更に鋏で切り取って透かしの部分を作る刺繍の技法。レースのような繊細さが魅力)が施されたシャツ。半袖の下着の上に着用するのが正装とされている。


 などがあります。

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