穴だらけの知恵袋

東アジア その㉒トン族他

　今回は侗（トン）族についてからです。

　トン族は貴州省に過半数が、あと広西チワン族自治区と湖南省にも居住している民族です。主に農業（水田耕作や雑穀、トウモロコシ栽培）や林業を営んでいるのですが、生薬を栽培したり、あと外国でも評判が高い民芸品や民族音楽によって生計を立てる者もいるのだとか。宗教はアニミズム。けれど、道教や仏教、あとキリスト教の影響も多少受けているようです。

　トン族は服の色合いを大事にするというおしゃれな民族で、季節や日によって服の色が決まっています。春と秋、冬は黒と青。夏は白い服を着用するのですが、お祭りの日には紫色の服を纏うそうです。ということは、トン族にとって紫は尊い色なのかもしれませんね。

　色以外の服の情報は、地域によって多様な差があるようですが、概ね以下の通りです。男性は短い上衣にボタンの無い短い坎肩、長ズボンというスタイルです。あと、頭には頭巾を巻きます。

　女性は、刺繍が施された腹掛けの上に七分袖でボタンのない長い上衣を羽織り、スカートがズボンを穿きます。髪形は多種多様で、もちろんアクセサリーも身に付けます。また、女性は刺繍で飾った船の形の靴を好んで履くそうです。

　お次は水（スイ）族。スイ族は貴州省と広西チワン族自治区、あとベトナムで暮らしている民族です。スイ族の人はあらゆるものに神は宿ると信じており、また自然や祖先を信仰しているそうです。

　スイ族の人は、その名の通り？　男女問わず青や紺色を好むのだとか。服のスタイルとしては、男性は大襟の短い衫に帯＋その上に対襟の坎肩＋長ズボンとなります。あと、頭には頭巾を巻きます。

　女性は、普段は立襟で大襟の半長衣＋裾を模様を刺繍した布で縁どったズボン＋胸には鮮やかな刺繍が施された黒い前掛けといういで立ちです。しかし、祭りの際はスカートを穿くのだとか。祭りの日は、ズボンがスカートに替えるだけでなく、耳や首、腕に様々な銀のアクセサリーを身に付けます。

　お次は仡佬（コーラオ）族。

　コーラオ族は主に貴州省、あと他の州や自治区にちらほら居住している民族です。コーラオ族は長く漢族と交わって暮らしていたため、固有の習慣などはほぼなくなっていると言われています。ただ、ろうけつ染めはコーラオ族女性の伝統的な工芸品であり、女性はこのろうけつ染の布で作られた衣服を纏うこともあるようです。

　前述のように、コーラオ族は服装においても漢族と違いがなくなっているようですが、一応述べておきます。

　コーラオ族男性は、紐ボタンのある対襟の上衣に長ズボンを合わせ、頭巾を巻きます。

　コーラオ族女性は大襟で長袖の上衣＋その上に貫頭衣に似た形の半袖の袍or縁周りに装飾が施された坎肩に、襞の多いスカートというスタイルです。上記の坎肩はスリットがあり、後ろ身頃が前身頃よりも長くなっています。

　コーラオ族女性は男性同様に頭巾を巻くのですが、その後ろの片端が肩まで垂れるように巻きます。

　お次は黎（リー）族。

　リー族はその九割以上が南シナ海北部に浮かぶ海南島に居住しています。宗教は、「鬼神」と称される精霊のような存在に、アニミズム的な信仰を持っているそうです。

　そんな彼らの居住地である海南島は、北部は温帯、南部は熱帯というトロピカルな気候です。そのため、リー族の民族衣装はどこか開放的なデザインで、材質も綿や麻など通気性がよい素材の布が用いられています。またリー族の織物「黎錦」は早くも十世紀ごろからその美さで知られていて、清代では朝廷に献上されていたそうです。

　織物上手のリー族の民族衣装は、地域によっても差があるようですが、以下に大まかな特徴を。男性はネックラインなしの対襟の上衣に、短いズボン。女性は袖口と袖に刺繍が施された対襟の上衣に、上記の黎錦の膝丈の筒型のスカートといういで立ちになっています。

　今回の最後は畲（シェ）族です。

　シェ族は福建省（シェ族は福建省における最多の少数民族です）、あと浙江省、江西省、広東省、安徽省に居住しています。

　シェ族にはヤオ族同様、凄い犬・盤瓠が祖先であるという伝承があり、犬をトーテムとしているそうです。そのため、犬に関する伝承や風習、あと犬を食べることへのタブーがあるのだとか。

　そんなシェ族男性は対襟の短い上衣＋坎肩＋長ズボンというスタイルです。女性は右に打ち合わせがくる大襟の上衣に、短いスカートかズボンを合わせます。襟や袖口、裾には刺繍も施されます。

　女性の髪形は特徴的で、髪を頭上にらせん状に巻き上げる。もしくは頭の上で帽子のようにぐるぐると巻き、赤い糸で縛ります。結婚の際にはこの上に、竹筒で作られ銀の飾りや赤い布、リボンで彩られた「鳳凰冠」という飾りを付けます。