東アジア その⑯サラール族他

 今回は、撒拉(サラール)族についてからです。

 サラール族はテュルク系のムスリムの民族で、その祖はオグズ族(かつて存在した遊牧民族。オグズ族が建てた王朝で最も著名なのはオスマン朝でしょう)だと言われています。中央アジアのサマルカンドから東進してきたオグズ族が、他の民族と交わって形成されたのがサラール族なのだそうです。サラール族は、現在では主に青海省や甘粛省、新疆ウイグル自治区で暮らしているのだとか。

 上記のような歴史を持つサラール族の服装は、回族のものに似ていて、男性は円い帽子を被り、女性は頭巾を被ります。もっとも、色彩など違うところももちろんあります。では、以下で詳細を。

 サラール族男性は、上は対襟の白の上衣(汗塔児という)に黒のベスト、下は黒か紺の長ズボンといういで立ちです。更に前述のように白く円い帽子を被り、冬には毛皮製の大襟の外衣を着用します。女性は上は大襟で立襟の花柄の上衣と黒のベスト、時々短めの袖が広い長袍+長ズボンかスカートというスタイルです。そして、黒い頭巾を被ります。


 次は保安(バオアン)族について。バオアン族はその大半は甘粛省で暮らしている、モンゴル系の民族になります。また、バオアン族の大半はスンニ派のイスラムを信仰しているけれど、青海省で暮らすごく少数はチベット仏教を奉じているそうです。バオアン族は優れた製刀の技術を持っていて、彼らが作るナイフ「保安刀」は、切れ味のみならず見た目の美さでも知られているのだとか。バオアン族の収入の一部は保安刀から得られるそうです。

 バオアン族はムスリムの民族ですから、男女ともに被り物をしています。彼らの服装にはその他にも、前回述べた同じムスリムの民族である回族やドンシャン族に似たところがあります。

 バオアン族男性の服装は、上は対襟の白い衫に坎肩もしくは縦縞の黒い長袍、下はズボンとなります。そして、衫の上から帯を締め、白か黒の円い帽子を被ります。女性は、上は立襟の白い上衣と長めの坎肩に、下は男性同様ズボンとなります。男女ともに、袖口やズボンの裾には花辺(模様を刺繍した縁取り布)によって飾られます。


 お次は裕固(ユグル)族について。ユグル族の大半は甘粛省の粛南ユグル族自治県で暮らしていて、畜産業を生業としています。八世紀から九世紀にかけて存在した遊牧国家・回鶻ウイグル可汗国の崩壊により、現在の甘粛省に逃げてきた回鶻人(古代のウイグル人)の一派がユグル族の祖先なのだそうです。宗教は、チベット仏教ゲルク派とシャーマニズムが混合して信奉されているのだとか。

 ユグル族の衣服作りには、羊毛の布が使われます。男性は長衫に色糸の帯を締め、ブーツを履きます。女性は立襟の長袍を着て、銀や珊瑚の飾りを付けた帯を締めます。また、ユグル族女性の髪形は三本の三つ編みなのですが、うち二本は胸に、一本は背中に垂らして帯と繋ぐ、という独特のスタイルです。このほか、山が尖り、赤い房で飾られた帽子も被ります。


 今回の最後は、門巴(メンパ)族について。メンパ族はチベット系の民族で、中国だとチベット自治区で暮らしているのですが、中国国外だとインドのアルナーチャル・プラデーシュ州にも居住しているのだとか。そんな彼らは、男女共にプル(チベット産の羊毛の織物)製で、毛皮の縁がある大襟の袍(男性は丈が短め)を着用し、2mほどの赤い帯を締めます。抜爾甲ハルジャという小さな帽子を被るのも男女共通です。

 男女の違いとしては、女性は上に坎肩を重ねます。また、地域によっては縞模様のスカートの上に白いプル製の前掛け(給馬ゲイマと呼ばれる)をするのだそうです。更に、男性は腰に刀を差し、女性は銀の装飾をするという違いもあります。

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