東アジア その⑮ダウール族他

 今回からは、今まで紹介できなかった中国の少数民族の服飾について、簡単に触れていきます。

 

 まずは、達斡爾(ダウール)族について。ダウール族は主に内モンゴル自治区に居住する、モンゴル系の民族です。そのため言語や文化、習慣などにおいてモンゴルの影響を多分に受けつつ、しかし独自の部分も有しているのだとか。

 ダウール族は男女ともに、大襟(衽の打ち合わせの位置が右か左のどちらかになるタイプのこと)で立襟の長い袍と腰帯と、鹿や狐の頭皮製の帽子というスタイルになります。しかし、男性の袍はかつては対襟(身体の真ん中に合わせ目がくるタイプ)だったそうです。女性は更に、雲などの模様の縁取りがある坎肩(ベスト)を重ねます。


 お次は鄂温克(エヴェンキ)族について。エヴェンキ族はツングース系民族の一つで、中国では内モンゴル自治区、ロシアではエヴェンキ自治管区で暮らしています。伝統的な宗教はシャーマニズムですが、帝政ロシア時代に行われた布教の影響で正教も信仰する者もいるそうです。また、信仰のみならず生活習慣においても、居住する国に関係なくロシアの影響を受けているのだとか(パンを食べたり紅茶を飲んだり、スカーフを被ったりなど)。

 エヴェンキ族の伝統的な服装は、ダウール族同様に大襟で立襟の長袍です。女性の袍は身体にぴったりしているけれど、スカートの部分はゆったりしています。

 袍の上から帯を締め、長い革靴を履き、フェルトの帽子を被ります。袍には袖や襟の周辺に装飾が入るそうです。


 お次は鄂倫春(オロチョン)族について。オロチョン族はエヴェンキ族と同じツングース系の民族で、エヴェンキ族同様中国(内モンゴル自治区)と、ロシア(バイカル湖沿岸~アムール川沿い)で暮らしています。

 オロチョン族は男女共に、黒や赤、黄色に藍色の縁取りが入った、膝丈の皮の袍を着用します。袍の上には防寒のため毛皮の外套を重ね、傷のない鹿の頭皮で作った帽子を被り、魚の皮の靴を履いて魚の皮の手袋をします。ここまで徹底して肌を出さないようにするのは、防寒のためなのでしょうか。


 お次は回族。回族は中国最大のイスラムの集団です。回族はイスラムの戒律を守りながら、中国全土で漢族と交わりつつ暮らしています。そんな彼らの服装の特徴は、男性は黒か白の円い帽子を、女性は年齢によって色が違う(娘:緑、既婚女性:黒、老婦人:白)の頭巾を被ることです。


 お次は東郷(ドンシャン)族。ドンシャン族はモンゴル系の、イスラム教徒の民族で、主に甘粛省の臨夏回族自治州やその周辺で暮らしています。

 後ろや横で開く坎肩の他は、ドンシャン族は男女ともにイスラムらしい恰好をしています。男性は回族と同様に黒か白の円い帽子(号帽と呼ばれる)を被ります。女性は、刺繍のある腰までのベール「蓋頭」を被り、顔だけを覗かせます。


 今回の最後は、土(トゥ)族について。トゥ族はモンゴル系の民族で、主に青海省や甘粛省に居住しています。文化はモンゴルのものによく似ているそうです。宗教は、チベット仏教や道教を信奉しているのだとか。

 トゥ族は男女とも刺繍が施された立襟の白い上衣を着用します。男性の場合は袖に黒い縁取り、女性の場合は五彩(天界の色を表すという、青、赤、白、黒、黄の五色のこと。また、「沢山の色」という意味で使用される場合もある)の縁取りが入るそうです。その上に、袖なしの大襟の袍のような坎肩を重ねます。坎肩の丈は、腰までのものと長いものの二つのタイプがあるそうです。更に、つばを折り返し、装飾がある裏側を見せた帽子を被ります。

 男性の下衣はズボンです。そしてズボンを穿いたら、帯を締めます。女性の下衣はスカートで、そして幅広の帯を締めます。


 


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