東アジア その⑭トゥチャ族

 今回は土家(トゥチャ)族についてです。トゥチャ族とは主に湖南省、湖北省、重慶直轄市に住む、中国では八番目に数が多い少数民族です。二千年前からこれらの地域で暮らしていたのだとか。ちなみに、上記の地域の特産品の一つに娃娃魚ワーワーユー(チュウゴクオオサンショウウオ)があります。チュウゴクオオサンショウウオは食用や美容品、皮革としても利用されているそうなのですが、野性個体はワシントン条約によって保護の対象と定められてもいます。

 トゥチャ族は長く漢族と交わり、漢民族の影響を受けつつ暮らしてきた少数民族です。そのためなのか現在ではほとんどが中国語を母語としていて、トゥチャ語は伝承の危機に晒されているのだとか。


 トゥチャ族には、二千年の歴史があるという「土家錦」の技法が伝わっています。言い伝えによると、土家錦織は民族の祖である女性が作りだしたそうです。

 土家錦では縦糸は五色の綿糸、横糸は様々な色の絹糸、綿糸、毛糸を使い、伝統的な図案を織りだします。図案は抽象的で左右対称のものが多く、自然界の文様、幾何学文様、文字文様の三つに分けられます。土家錦は厚手で丈夫なので、長持ちします。そのためなのか服地としてだけでなく蒲団や家庭用品の材料としても使われるのだとか。このようにトゥチャ族の女性は機織りに秀いているのですが、他にクロスステッチも得意としているそうです。


 トゥチャ族は本来、男女ともに短い上衣と筒型のスカートというスタイルだったそうです。が、清代の少数民族に対する同化政策の結果、男女の服装に区別が生じました。では、以降で男女それぞれの恰好の詳細を。

 トゥチャ族男性の上衣には、前開きで多数の紐ボタンで留める対襟のものと曲襟のものがあります。もともとは曲襟のものだけだったけれど、時の流れとともに対襟タイプも着用されるようになったそうです。上衣の縁には、三本の細いテープ(ここでは、幅が狭く紐状に織られた布のこと)「三股筋」の装飾が施されることが多いのだとか。前身頃にも、如意紋(※)などで装飾が入るそうです。

 下衣は幅広のズボンを穿いていて、襞を寄せるように布製のベルトを締めます。更に、上衣の上にも飾り帯を締め、脛あてをつけ、頭には青か白の長い布を「人」の字のように巻きます。

※如意とは本来は、先端が手の形をした痒いところを掻くための道具です。が、僧侶が読経のためのメモとして用いたり、指示棒のようにも用いられていました。が、段々と観賞用としての役割も求められるようになり、玉や石、金属などで凝ったものが作られたりもしました。如意は天帝の力の象徴でもあり、民間では非常に好まれる吉祥文様の一つでもあります(「中国伝統吉祥図案」より)。


 トゥチャ族女性の服装は、立ち襟で大襟の上衣とスカートかズボン、というスタイルになります。上衣については、本来は左衽だったけれど漢民族の影響のため、右衽のものも着用されるようになったそうです。

 上衣の立ち襟の部分の長さは約1.5㎝で、「三股筋」で装飾されます。身頃はゆったりとしていて、縁には別の色の布を施し(中国服はよく、裾や襟の布が別の布になっているものがありますが、あんな感じです)、合わせ目に沿って花文様のテープを縫いつけます。袖口も、同様に別の布や花文様のテープで飾られます。更に前身頃の脇には雲文様などを施し、隅には花や蝶の文様を刺繍します。また、授乳を容易にするため、既婚の女性の袖の幅は特に広くなっているそうです。

 トゥチャ族女性の下衣は、本来は布八枚を縫い合わせた長いギャザースカート「八幅羅裙」だけだったそうですが、時の流れとともに幅広のズボンも着用されるようになったそうです。ズボンの場合は、裾に花文様のテープを三本縫い付けるのだとか。

 上衣+スカート/ズボンに加え、トゥチャ族女性は前掛けも身に付けます。頭には男性同様のスタイルで布を巻いたり、帽子を被ったりも。もちろんアクセサリーも身に着けるのですが、トゥチャ族の女性は銀製の装飾品を好むそうです。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る