東アジア その⑬チワン族他

 今回はチワン族その他の、主に広西チワン族自治区で暮らしている少数民族の服装について述べていきます。まずは壮(チワン)族について。

 チワン族は中国で最も数が多い少数民族で、彼らの居住区は気候は温暖で土地も豊かな、風光明媚なところなのだそうです。

 チワン族のトーテムは蛙です。蛙はチワン族にとってトーテムであると同時に守り神でもあるため、今でも祭りが行われているのだそうです。


 チワン族には伝統的な織物「壮錦」の技術が伝わっています。壮錦は文様の色や種類が大変豊富で、とても美しいです。唐宋時代から既に作られていて、明清時代には高い評価を得ていたという、歴史ある工芸品でもあります。

 またチワン族は、機織りのみならず染織の技術も優れていて、点蝋幔てんろうまんという、絞り染めやろうけつ染め、板締め(模様を彫った二枚の板に布を固く挟み、染料を流し込む。すると板に挟まれていた部分は白く残る、という染色法。夾纈きょうけつとも)の技法を用いられた布も作られます。チワン族は刺繍も得意としているので、染織と刺繍を組み合わせて衣服を飾るそうです。


 チワン族は男女共に手織り手染めの、藍色か黒の服を好むそうです。また、漢族の影響を強く受けてもいるのだとか。

 チワン族男性の服装は対襟の上衣と長いズボンというスタイルです。上衣は襟(首回りの布)がなく、色は白や薄い色が好まれ、空いている場所を留めるのにチャイナボタンが使われているそうです。ズボンは上記のように濃い色のものが多いのだとか。更に、幅広の布のベルトを締め、頭に長い布を巻いて、菅笠を被ります。

 チワン族女性は短い対襟か左衽の上衣+裾が広いズボンか細い襞が多いスカートに、刺繍した前掛けというスタイルです。頭に花模様の頭巾を被るのですが、男性同様菅笠も被ることもあるそうな。

 袖口やズボンの裾の装飾は凝っていて、花辺(刺繍した縁取りの布)が付けられたり、直接刺繍したりします。対襟の上衣にも、前開きの部分に精緻な装飾がされるそうです。服の装飾としては、銀の飾りを縫い付けたりもするそうです。更に、銀のアクセサリーもよく付けるそうです。


 お次は瑶(ヤオ)族。ヤオ族もまた古い起源を持つ民族で、盤瓠ばんこ神話という、民族の起源の伝承を有しています。実は私が高校の頃漢文の授業で盤瓠神話を学んだので、なんだか懐かしい感じです。ちなみに内容は、


 異民族の侵入に悩まされていた帝が、ある時敵の将軍を破った者に娘と賞金を与えるとお触れをだした。が、敵将を倒したのは、色々と凄い犬(五彩の毛をもっていたり、敵将の首を噛みちぎったり)・盤瓠だった。

 娘を犬に嫁がせるのに躊躇する帝。しかし姫君は、帝が嘘を言ってはいけないと、自ら望んで盤瓠に嫁ぎ、ヤオ族の祖となる六男六女を産んだ。


 という感じです。上記の逸話から、犬はヤオ族のトーテムでもあります。また、ヤオ族は脛当てを付けるのですが、これは犬から人間に変わった時に抜けきれなかった毛を隠すため、という謂れがあるそうです。

 上記の他のヤオ族の服飾の特徴についても。ヤオ族の服の種類は豊富だけれど、男女とも基本は藍色か青の上衣(女性の場合はクロスステッチで飾る)とズボンに脛当て+銀の装飾品なのだとか。立場を表すための頭飾りも、多種多様にあるそうです。


 お次は仫佬(ムーラオ)族。ムーラオ族は道教の混じったアニミズムを信仰しており、文字を持たないため歌で文化を伝えるそうです。

 ムーラオ族の服装は、下衣は男女ともズボンなのですが、上衣は男性は対襟、女性は大襟という区別があります。色は、青や藍色が好まれるそうです。ムーラオ族男性は風領という飾り襟をつけ、頭には布を碗のように巻きつけます。ムーラオ族女性は髪を頭上で結い耳飾りなどのアクセサリーをつけ、先が尖った刺繍入りの布靴を履くそうです。


 お次は毛南(マオナン)族。マオナン族はチワン族と漢族の文化の影響を受けている民族なのだとか。マオナン族の衣服は、男女とも藍色か青が好まれています。男性は対襟の上衣に幅広のズボン。女性は大襟の上衣に花辺で装飾したズボン、といういで立ちです。彼らの民族衣装の特徴としては、男女ともに持つ花竹帽(竹編み笠)が挙げられます。


 最後は京(ジン)族について。彼らはベトナムの主要な民族で、狭義のベトナム人であるキン/ベト族のことでもあります。ジン族男性は対襟で筒袖の上衣に帯を締め、幅広のズボンを穿きます。ジン族女性の服装は刺繍入りの菱形の胸当てと、対襟で襟(首回りの布)なしの、身頃と袖が身体にぴったりした上衣+長いズボンとなります。外出の際は、ベトナムのアオザイのような白い長衫を着用するのだとか。また、ジン族も男女ともに菅笠のような笠を被るそうです。

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