東アジア その⑫ミャオ族

 今回は苗(ミャオ)族についてです。ミャオ族と同系統の民族は中国国外にもいますが、中国では貴州省などに居住しています。中国では四番目に数が多い少数民族で、色々な学説があるようですがとにかく古い起源を持つ民族でもあります。

 ミャオ族は地域によって服の色や文様が異なり、青苗、白苗、花苗、紅苗、黒苗の区別があります。服のスタイルが多様なのは、分散して住んでいる人々が集合した際、所属する家系を区別するためなのだそうです。

 民族のトーテムは蝶で、文様として多く利用されます。なんでも神樹から生まれた蝶が十二個の卵を産み、そこから人、龍、牛、虎、雷などが孵ったという伝承があるのだそうです。そのためなのか、龍と牛もミャオ族のトーテムであり、龍は盛装の文様として刺繍されますし、牛の角のような銀の髪飾りも使用されます。

 

 上でもさらりと触れましたが、ミャオ族の銀の装飾品は精緻かつ多様です。櫛に簪に冠、首飾りに腕輪に耳飾りとスタンダードなものだけでなく、衣服に縫いつけるタイプのものもあるのだそうです。

 ミャオ族は少数民族の中でも飛びぬけて身に着ける装飾品の数が多く、祭事の際は全身を覆うように付けるため、歩くたびにしゃらしゃらと銀が擦れ合う音がするのだとか。

 一方で、女性たちは装飾品の数を競い合うため、総重量が十五キロを超すこともあるそうです。おしゃれは我慢、というやつですね。銀は本来はミャオ族の通貨だったけれど、諸事情により移動することが多かったため、装飾品に作り替えたという説もあるそうですが。


 また、ミャオ族の女性は花帯(文様が織り込まれたリボン)を作るのが巧みなのだそうです。花帯は衣服の装飾として(上衣やズボンの裾、袖口などに)、紐としてかばんなどの飾りに利用される他、恋人への贈り物にもされます。なんでも蛇は同類を攻撃しないため、彩色された糸を用いて蛇と同じような文様を織り込んだ花帯を身に着けていれば、山に入っても蛇の害を受けないという伝承があるそうです。つまり、お守りとしての役割も果たしているのですね。


 ミャオ族の衣服は上記のように多様なのですが、男性の場合は主に前開きの対襟の短い上衣と、大襟(衽の上下を斜めに重ねるタイプのもののこと)の長衣の二種類があるそうです。腰には広い布の帯を締め、ズボンを穿き、脚絆も付けます。更に毛氈フェルトの肩掛けを羽織ったり、坎肩(ベスト)を着用したりも。

 頭には端に彩色された毛糸の房が付けられた長い布をターバンのように巻き、その片方を肩まで垂らします。男性の服は、時々刺繍が施されたものがあるそうです。


 ミャオ族の女性の衣服は男性以上に多様で、村などの集団ごとに様々なタイプがあります。上衣だけでも貫頭衣に、大襟、対襟、曲襟(上の衽が曲線上になったもの)など。下はスカートだったりズボンだったり様々なようですが、ミャオ族のスカートは色々な長さや形式(祭りの際はプリーツスカート、など)のものがあるようです。これらに加えて、坎肩や刺繍を施した前掛けを身に着けることもあるのだとか。

 ミャオ族の刺繍は大変美しく技法も豊富なので、もちろん上衣や下衣にも刺繍は施されます。他、布を飾る技法としてろうけつ染めも行います。

 ミャオ族女性は髪形もまた多様なのですが、頭に長い布を巻き、その上に物を乗せて運ぶ習慣があるそうです。

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