東アジア その⑪ジーヌオ族

 今回は、雲南省はシーサンパンナ(西双版納)タイ族自治州景洪市基諾郷とその周辺に住んでいる、基諾(ジーヌオ)族について述べていきます。

 ジーヌオ族は中国少数民族では数が少ない方(2000年の人口の調査では44/56位)の民族です。彼らの居住地は一年中気温が20℃前後で雨量も十分と、茶の栽培に適しています。そのため、プーアル茶とあと綿花が特産品なのだそうです。

 ジーヌオ族は代々あの諸葛孔明を敬っていて、茶の種は孔明から与えられたもの、という言い伝えも伝わっているのだとか。一説によると、ジーヌオ族の祖先は孔明の部下だったそうで、この伝承は後述のようにジーヌオ族男性の髪形にも関わっています。ジーヌオ族には、彼らの民族衣装の二つの文様の言われを語る、以下のような伝承が伝わってもいます。


 ある時、婚約者がいる女性が悪代官に攫われてしまった。女性は悪代官に従わず、鞭打たれて血だらけになってしまう。(本では明記されていなかったけれど、セオリー的におそらく女性の婚約者が)女性を助け出した。けれど、女性は背中に負ぶわれながら逃げている最中、悪代官の弓が当たって死んでしまった。その女性は、太陽花(具体的にどの花を指すのかは不明。百度で「太阳花」で検索したところ、向日葵がヒットしたり、マツバボタンの別名だったり、太阳花=月亮花=日月花とされていたり、もうわけわかめです。もっとも、向日葵は新大陸原産の植物なので、向日葵=ジーヌオ族の太陽花の可能性は低いでしょうが)に化身した。

 女性の婚約者は、愛する彼女といつも共にいたいと太陽花の文様を身に着けるようになった。そうして、太陽花はジノ族の衣服の文様となった。同様に、太陽花となった女性が鞭で叩かれてできた血だらけの傷跡から、横縞文様が生じた。


 のだそうです。太陽花と横縞は、性別を問わずジーヌオ族の民族衣装に多用されている文様なのだそうですが、なんとも悲しい物語ですよね……。気を取り直して、以下で男女別の違いを述べていきます。

 ジーヌオ族男性の上衣は、対襟で丈は腰まで。綿か麻の、白や生成りの布から仕立てられます。上衣は無地というわけではなく、赤や藍色で前述の言われがある横縞や格子柄が施され、背中には太陽花の文様が施されています。なお、百度で太陽花の正体を追っているうちにヒットした情報によると、太陽花の文様は孔明が伝えた八卦図から生じた、という説もあるようです。私の耳垢レベルの中国語解明能力によれば、ですが。

 なにはともあれ、ジーヌオ族男性は上記のような華やかな上衣に、幅広のゆったりとした、膝下までぐらいの丈のズボンを合わせます。ズボンの胴囲は、前後別々に紐で留めて行うそうです。更に、太陽花を装飾した脚絆を受け、掛包(かばんのこと)を持つそうです。掛包を持つことは、ジーヌオ族にとっては成人男性の象徴なのだとか。

 最後に、ジーヌオ族男性の髪形。これを忘れちゃいけませんね。ジーヌオ族男性は髪を三つの束に結ぶのですが、そのうち中央は孔明、左右は両親の象徴であり、祖先を偲ぶ意味が込められているのだそうです。結んだ髪の上には、黒か白の長い布を巻きます。また、ジーヌオ族では女性だけでなく男性も耳飾りをする習慣があり、模様のある竹や銀製の耳飾りを付けるそうです。


 お次はジーヌオ族女性の服飾について。女性の上衣は男性同様に対襟なのですが、丈が非常に短く、ボレロのように羽織ります。身頃(衣服の、襟・袖・ 衽などを除いた、身体の前後を覆う部分のこと)は生成りか黒の地に、赤や藍色に黄色や白の横縞の装飾が施されます。更に袖は花模様の生地を縫い合わせ、赤い色の縁取りをするそうです。

 上衣の丈が短いからか、ジーヌオ族女性は上衣の内側に肚兜(金太郎が付けているような腹掛)を付けます。この肚兜は上衣同様に横縞文様は刺繍で飾られているそうです。

 ジーヌオ族女性の下衣は、黒い布地を赤で縁取りした短い巻きスカートになります。加えて、黒い布地の脚絆をつけ、頭には尖った頭巾のような帽子を被り、男性同様耳飾りも付けます。

 

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