東アジア その⑦ウイグル族他

 今回は、中国の新疆ウイグル自治区に住まう民族の服飾について述べていきます。まずは維吾爾(ウイグル)族についてです。

 ウイグル族は中国の新疆ウイグル自治区や、カザフスタンやウズベキスタン、キルギスなどの中央アジア諸国に居住しています。ウイグル族は歌や踊りを好む、情熱的な人々なのだとか。

 中国の新疆ウイグル自治区は、中国全土の六分の一を占める広さです。しかしその四分の一は砂漠が占め、他国との国境付近にはカラコルム山脈、崑崙山脈、天山山脈がそびえています。

 天山山脈の東の端近くのトルファン盆地は砂漠地帯なのですが、果物、特に葡萄が豊富に収穫されます。ウイグル族と葡萄の関わりは深く、衣服の文様としても多様されているのだとか。また、トルファンは良質の綿の産地としても有名で、ウイグル族は一般に綿の布で服を作るそうです。


 イスラム教徒である証として、ウイグル族は男女ともに朶巴ドウパという文様のある小さな帽子を被ります。この帽子の形は四角、六角、円形と様々。材質も、刺繍したベルベット製や冬は皮製など、様々です。

 ウイグル族の男性は、筒袖で膝下までの丈で右衽うじんの、袷袢チャパンというコートのような上衣を着ます。この袷袢はボタンを付けず、長い布の帯で締めます。また、腰に方形の布を斜めに折って結び、三角形の部分を垂らして飾りにするという着こなしをすることも。ズボンはゆったりとしていて、裾を皮製のブーツに入れます。

 ウイグル族女性は色鮮やかな絣織の、アトラスという絹織物のワンピースを着用します。衿は折り返しが多く、前をボタンで留めます。ワンピースの上には丈の短いベストを重ねます。ベストにはビーズや光る金属を縫い付けたり、刺繍で飾るそうです。

 女性の場合は、朶巴ドウパは軽い材質で色鮮やかで、ビーズ刺繍することもあるようです。更に、地域によってはベールで顔を覆うこともあるのだとか。髪形は、若い女性の場合は十数本の三つ編み、既婚の女性の場合は二本の三つ編みだそうです。他、イヤリングやネックレス、ブレスレットにスカーフ、マニキュアで身を飾るのだとか。とても華やかですね。


 お次は哈薩克(カザフ)族について。カザフ族はウイグル族同様中央アジアにも居住しています。羊や馬の遊牧を主な生業としていて、男女ともに騎馬を得意としています。すると自然、服装も騎馬生活に適応したものになるのですね。

 男性は夏は領(ここでは、ネックラインを含めた首輪周りの装飾のこと)が高いさんにズボン。冬はたっぷりとした羊皮のコート+皮の帯となります。女性は鮮やかな色の花柄のワンピースで、冬は綿入りで対襟(中国服でいうと前で合わせるタイプ)の袍を羽織ります。男女とも靴は革の長靴で、帽子を被ります。


 お次は柯爾克孜(キルギス)蔟について。キルギス族はその名の通り、キルギスにも居住しています。男性は首回りと前立て(シャツの前ボタン部分に付けられる帯状の部分のこと)に刺繍が施された、高領の白い上衣に、ズボンを合わせます。更に黒か藍色のネックラインなしの袷袢を羽織り、皮の帽子を被ります。女性は膝丈のゆったりとしたワンピースに対襟の袍にベストを重ね、赤い帽子を被ります。この帽子には房や羽を飾り、ベールを付けるそうです。靴は男女ともにブーツです。


 お次は锡伯(シベ)族について。シベ族は新疆ウイグル自治区と遼寧省に居住しています。十八世紀、清朝の時代に屯田兵として東北地域から来た民族だそうで、服装は漢族、蒙古族、ウイグル族の影響をうけているそうです。

 男性は左開きで大襟(中国服でいうと合わせ目が斜めになっているタイプ)の長袍に帯びを締め短い上衣を重ね、丸い帽子を被り革の長靴を履きます。女性は旗袍の上にウイグル族風の坎肩カンツェンを重ね、装飾のある食うを履きます。髪形は、未婚ならば一本、既婚ならば二本の三つ編みにし頭に巻きあげ、老婦人は頭に白い布を巻くそうです。


 お次は塔吉克(タジク)族について。タジク族は中国で唯一のイラン系の民族で、新疆ウイグル族のタジキスタンに隣接する地域に住んでいます。高原では放牧をし、季節によって谷間で農業を営んでいるそうです。

 男性は白の高領で前立てのある上衣にベストや長袍を重ね、下衣は黒いズボンを穿き、縁を下ろせる毛皮の帽子を被ります。女性は赤や黄色のワンピースにベストやコートを重ね、丸い帽子を被りベールを付けて、銀などの装飾をするそうです。


 お次は烏孜別克(ウズベク)族について。ウズベク族はテュルク系のイスラム教徒で、牧畜や農業を営んでいます。

 男性は袖口や領、前襟に刺繍のある上衣にズボンを合わせます。更に、ウイグル族の袷袢に似た托尼トゥニという衣服を羽織り、布の帯を締め、小さい刺繍のある帽子を被ります。女性は魁納克クワイナクというギャザーの入ったワンピース、もしくは上衣と裾に毛皮を装飾したスカートを穿きます。更に、小さな帽子を被り、紗のスカーフをします。


 お次は俄罗斯(ロシア)族で、その名の通りいわゆるロシア人と同じ民族です。男性はネックラインや前襟、袖口に幾何学模様の刺繍が施された上衣にズボンを穿き、冬には皮の外套を羽織ります。女性は花柄か刺繍入りのギャザーのあるワンピースで、皮の半オーバーを着用し、スカーフを被ります。靴は男女とも皮のブーツです。


 最後は塔塔爾(タタール)族です。タタール族はテュルク系のイスラム教徒で、シベリアやクリミアにも居住しています。タタール族男性は、首回りや袖口に草花文様を刺繍した白い上衣に、短いベストか対襟の長衫を合わせます。下はズボンです。女性はギャザーの多いワンピースにベストを合わせ、前掛けをします。その上、ベールを付けた小さい帽子を被り、色糸でアップリケを施した革靴を履くのです。

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