東アジア その⑥蒙古族
今回は蒙古族(モンゴル族)についてです。
蒙古族は主に内モンゴル自治区に居住していますが、東北の他の省などでも暮らしています。皆さんご存じでしょうが、現在は定住して農業その他を営んでいることもありますが、蒙古族は元来は遊牧民族です。そのため、蒙古族の衣食住や行動様式は、遊牧生活と密接な関わりを持っています。
蒙古族の服装は防寒と機能性を兼ね備えていて、男女とも蒙古袍(蒙古族の民族衣装のこと)を着用します。男性の場合、袍は大襟で右衽(詳しくは前回参照です)。衿は高く、身頃はゆったりとしています。女性は、細めの袍を着用します。
蒙古族の袍は、防寒のため裾広がりの裾の両脇にはスリットは入れられておらず、袖は長く幅が広くなっています。ですが「アジアの伝統染織と民族服飾」によると、モンゴル民族(※)の袍には足の動きを妨げないため、スリットやギャザーが入っているタイプのものもあるそうです。地域や部族によっても違いがあるんでしょうね。
※狭義のモンゴル民族とはモンゴル(外モンゴル)のハルハ蔟と中国の蒙古自治区(内モンゴル)のチャハル蔟を指します。が、広い意味ではロシアに住むブリヤート蔟、カルムク蔟、中国のダグール蔟なども含まれます。
蒙古族の袍は、春と秋は裏地つき、夏は単、冬は毛皮や綿入りと、季節に合わせて仕立てます。また、この袍は夜は掛け布団としても用いられるのだとか(日本も昔はそうでしたよね)。
気候や生活スタイルに適応したモンゴル民族の衣裳の特徴は、他にも沢山あります。例えば、打ち合わせの深い前身頃や筒状の袖は、乗馬や弓を射るのに適しています。馬蹄形の袖口も、風の侵入が妨げられるので、寒さを防ぐことができます。
革や
ズボンは幅広で襞がある、これまた乗馬に適したものになっています。更に、腰には小袋や小刀、火打石、鎌、煙草入れなどを下げるのですが、これも乗馬や移動の際に便利です。
中国の蒙古族の中での地域差としては、袍の上にベストを着る地域があったり、農業を営んでいる地域ではスリットの上衣を着用したりするそうです。
装飾としては、衿、袖口、裾には花辺(模様を刺繍した縁取りの布)や毛皮で飾るそうです。模様はたなびく雲の形が多いのだとか。前述の長靴に施されるのは、植物紋、幾何学紋、雲形紋などが多いそうです。
他には、帯は機能の面のみならず、装飾としても重要な役割を担っています。
蒙古族の帯は、袍と調和する色、特に赤や黄色や緑の綿や絹で作られるそうです。なお、節句や祭りでは、男女ともに牛乳に由来する神聖な色である白い服を尊ぶそうですが、平時では男性は紺や茶、女性は赤やピンク、緑色を好むそうな。確かに、赤や黄色や緑は、紺や茶色と組み合わせると映えますね。
帯の長さは3~4メートルあり、袍の形を整えて帯を締めます。すると風が入らなくなり、保温・防寒の効果が期待できるのです。
また、乗馬の際、背筋を伸ばし背中の骨を守る役目もあるのだとか。……私は本の記述だけでは、帯が何故乗馬の際背中の骨を守るのか分かりませんでした。でも、モンゴル民族の民族衣装を着て馬に乗ると分かるかもしれませんね。帯のあるのとないのでは、何かが違うのかも。
ちなみに、モンゴル民族は未婚の女性と男性は帯を締めるけれど、既婚の女性は帯を締めないそうです。そのため、モンゴル語で「ブステイ(帯を締める人)」は男性を、「ブスクイ(帯を締めない人)」は女性を指すのだとか。
私的にモンゴル民族=帽子が可愛いとなっているのですが、あのパオのような帽子の材質は季節によって布や毛皮を使い分けているそうです。また、頭巾を巻くこともあるのだとか。
あと、モンゴルといえば相撲ですよね。蒙古族の相撲服は胸の肌が見える、刺繍が一面に施された皮のチョッキと幅広のズボンの上下とベルトです。衿口にはひらひらと舞う色付きのリボンが、縁には銀製の鋲が付けられています。背中には、銀製の丸い鏡や吉祥文字の刺繍も。
ズボンは白い布か色がついた絹の布製で、襞を沢山とって足首でしばるので、提灯のような形になります。紐で括りつける脛あてはズボンのカバーのようで、刺繍で縁取りされ、花模様と獣の顔の装飾がされています。ベルトは幅広で、二列の銀の鋲が打ち付けられた革製のものか、色が付いた絹の布製です。
お次は女性の服飾について。
前述の通り女性も男性と同じ袍を着用するのですが、女性用は細めで、身体に沿ったデザインになっていて、刺繍も施されています。これまた前述のとおり、未婚の女性は帯を締めるけれど既婚の女性は帯を締めないのですが、代わりに身体にぴったりとした
モンゴル民族の女性の服飾といえば、頭飾りが特に豪奢ですよね。事実、頭部の装飾はモンゴル民族にとっては重要なことなのだとか(モンゴル民族の服飾は頭の飾り、袍、帯、靴の四つに特色があるそうです)。
モンゴルの女性は、普段は彩色のある長い布で頭を巻き、右側で留めて、布の端に房飾りをつけます。正装の際の髪飾りは、宝石を長く連ねた豪奢なものです。寒い時には、宝石や刺繍で飾った帽子を被るのだとか。女性用の長靴もまた、刺繍や花模様で華やかに飾られれています。
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