東アジア その⑤満州族

 今回からしばらくは中国の少数民族の服飾について述べていきます。もっとも、詳しく語れる民族と、あまり語れない民族があるのですが、そこら辺はご容赦ください。という訳で、まずは前回も述べた満州族から。


 満州族は中国少数民族の中ではトップスリーに入るぐらい人口が多い民族です。元々は中国東北部~ロシア沿岸地方で興った民族ですが、現在は中国全土に散在しているのだとか。民族のトーテムは鷹で、これには満州族の伝説が関係しているそうです。


 満州族は男女ともにパオグアを着用し、また満州族の衣服は清の八旗制度にちなんで旗袍と呼ばれます。

 男性の袍は大襟式(※)で長袖、裾の両脇にはスリットがありました。

 袍の袖口は上に巻き上げられるのですが、その形が馬の蹄に似ていることから「馬蹄袖マテイショウ」と呼ばれたそうです。防寒、もしくは狩猟などの際に矢を射る妨げにならないように袖を下ろし絞った「箭袖チェンショウ」は、礼服でもあったようです。

 正装の際は形が牛の舌に似ていて、中央にスリットがあり、ボタンで留めるタイプの領衣を着用するそうです。材質は、春と秋は薄い色の絹を、夏は紗を、冬は綿入れや毛皮が用いられたのだとか。

 おくみの上前と下前を、斜めに脇に重ねるタイプのこと。打ち合わせ(チャイナドレスでいうと胴体の幾つもの紐で留められた部分)の位置が右側に来る場合は右衽うじん、左側に来る場合は左衽さじんと呼ばれます。


 袍の上には、前回も述べた馬褂を着用します。しかし、満州族男性の馬褂は対襟(打ち合わせが身体の中央を真っ直ぐ通るタイプ)で、袖は平らで僅かに肘を隠す程度の長さ。丈そのものも腰を越えない、という違いがあります。これまた前回述べた坎肩カンツェン(袖なしの上着・チョッキ。紐ボタンで留める)を羽織ることもあります。下衣はゆったりとした長いズボンを穿きます。

 他、胸と背に補子(清朝の位階を表す装飾図案。文官か武官か、またそれぞれの品位によってデザインは異なった)を刺繍した補服という、清朝の官服もあります。素材も夏は絹、冬は毛皮と豪華なものです。もっともこれは、現代では本来の意味で着る権利を持つ人は一人もいませんが……。


 満州族男性の髪形といえば辮髪ですが、その上に瓜皮の帽子を被り、帽子の上には羽毛の飾りや絹の紐を飾ります。ブーツタイプの靴は底が厚く、筒は短く、形は雲頭、双梁、扁頭など様々です。正式な服装である朝服の際は長靴を履いたとか。ついでに朝服の際は、朝珠(胸にかける長い数珠)がマストアイテムだったそうです。これらに加え、腰にはベルトを締め、ベルトに銭袋、扇子入れ、小刀、香袋、眼鏡ケースなどを掛けるのだとか。


 満州族女性は、広い筒袖の旗袍を着ます。この旗袍は身頃は真っ直ぐ、丈は足首まで。全体的にゆったりとしていて、裾の両脇にスリットが入り、首回り、袖口、前身頃に花辺(模様を刺繍した縁取りの布)や刺繍で装飾されます。袖は馬蹄袖にはしません。

 季節によって単と裏地つきを使い分けます。材質は絹がよく使われ、防寒のため皮や毛皮も使われます。

 男性同様坎肩と馬褂も着用します。しかし女性の場合坎肩は腰まで。上着は首回りの装飾なしが多く、正装の場合は金糸銀糸で刺繍した霞皮を首から胸にかけたそうです。他の装飾としては、旗頭という扇型の頭飾りを被ります。満州族には纏足の風習はなく、ヒールが底の真ん中にある木靴を履きます。靴には植木鉢のような花盆底と、馬の蹄のような馬蹄底があるそうです。

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