十四冊目 世界の民族衣装

世界の民族衣装

 突然ですが、皆さんは「世界の○○」という本が、実際に取り扱っていたのはほとんどがヨーロッパについてで、「てめえの世界はヨーロッパだけでできてんのか、ああ?」と腹が立った経験はありませんか? 私は何回かあります。というか、そういう思いをさせられた最初の本が民族衣装の本だったのです。「世界の〇〇 西洋編」とでも銘打ってくれていたら許せたんですがね。


 ……まあ私の思い出話はこれぐらいにして、今回からは過去の私と同じような経験をした方のため「世界の民族衣装の事典」という本と、必要に応じて「アジアの伝統染織と民族服飾」その他の私が持っている衣服関係の本を参考に、世界の民族衣装についてまとめていくのでよろしくおねがいいたします。

 「世界の民族衣装の事典」は本当に「世界の」民族衣装だけでなくその成り立ちについて述べている名著ですし、図版は全てオールカラーという大変素晴らしい本なのですが、絶版です。なので、もしどこかで見かけたらぜひ入手なさってください。


 世界の民族衣装編の最初の回である今回は、まず衣服の特徴を原始的な形態別に述べていきます。


巻垂型

 裁断や縫うことをほとんどあるいは全くしない、一枚の布を腰に巻いたり頭に被ったりなど、身体に巻きつけて衣服とするもの。巻き方によって身分を示したり、襞の美さを楽しんだりする。また、身体のサイズに融通がきき収納しやすく、身体を締め付けないため涼しいという利点がある。更に、例えば中東のヴェールは強烈な日差しの他にほこりを遮り、夜間や冬季では防寒の役目も果たす。

 例:インドのサリー


貫頭型

 一枚の布の中央に頭が通るだけの穴を開け、被って着用するもので、世界各地で見られる。

 このタイプの衣服は首と肩でしっかり固定されるため、その他の部分をゆったり作ることができる。そのため、身体と衣服の間に空間を多くして涼しくすることもできれば、丈を長くして日差しから身を守ることもできる。おまけに、動きやすく着崩れしにくい。酷暑の乾燥地帯の遊牧民の民族衣装は、基本的にこのタイプ。ただ、砂漠の遊牧民は足首のぴったりしたズボンを穿くが、それは砂と害虫の侵入を防ぐためである。

 例:中南米のポンチョ


前開型

 前を左右から併せて帯で締めるかボタンで留める、上下一部式の衣服。概ねゆったりとした袖がつき、細長い衿がつく。脱ぎ着や重ね着がしやすく、開口部が多いため夏は涼しい。湿度は高く冬は乾燥している、アジア温帯地域から温度差のある乾燥地帯に広く分布。

 例:トルコのカフタン


腰衣型

 腰の周りに付ける衣服。東南アジアの民族衣装は基本的に腰衣型。

 例:インドネシアのサロン


体形型

 身体の形にあわせた立体的な衣装。身頃と袖から成る上衣、ズボンやスカートなどの下衣を組み合わせているため、動きやすく生活に便利である。

 体形型の衣服はスキタイ系の騎馬民族から古代オリエント世界へと広がり、さらにヨーロッパに伝わって発展した。寒冷地では開口部をできるだけ少なくした方がよいため、エスキモーの衣服もこのタイプである。エスキモーの毛皮衣が含通気性の毛が生えた面を内側に、難通気性の皮の面を外側に用いるのも、大変合理的である。

 例:スコットランドのキルト


 というようなタイプの民族衣装がそれぞれの地域の生活に応じて生まれ、時の流れと共に個性を習得していったのです。

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