ストレスその他
今回は戦闘のような強度のストレス(戦闘の他には銃撃とか)に晒された人間の身体に対して起ることを述べていきます。
何回も述べてきたのですが、従軍するというのは最大限に負荷が大きい行動です。そしてその一つは、いつ戦闘が始まるか分からない、戦闘が始まったとしていつ死の危機に晒されるか分からないという、不確実性にあります。という訳でこれから、不確実性がどれ程身体に影響を与えるのかを調べた実験について述べていきます。
まず、ネズミを三つのグループに分け、
グループ1:一週間、不定期に電気ショックを与えられる。
グループ2:期間は同じだけれど、警告のベルが鳴らされた後に、電気ショックを与えられる。
グループ3:ベルは鳴らされるけれど、電気ショックは与えられない。
というような差がある状況に晒します。そしてその後、ストレスの指標となる潰瘍の有無と、程度の違いをネズミを解剖して観察するのです。
結果、グループ3のネズミは潰瘍が最もありませんでしたが、グループ1のネズミの多くには潰瘍がありました。当然と言えば当然すぎる反応です。しかし、グループ1と同じくらい電気ショックを流されたグループ2のネズミの潰瘍は、グループ3よりもやや多い程度だったのです。
グループ1とグループ2の違いは、電気ショックの前に警告が与えられただけ。つまり、潰瘍の原因は電気ショックではなく、いつ電気ショックが来るかわからないという、「不確実性」だったのです。ネズミと電気ショックを人間と戦闘に置き換えてみたら、この章の最初の方で述べた、何日も戦い続けた兵士は精神に異常をきたす、というのは致し方のないことだったのだと納得できますよね。
人間は強度のストレスに晒されると大脳ではなく中脳で、原始的に反応してしまう、というのも前に述べました。人間にとって原始的な、けれども生命や種の維持にとって極めて重要な身体の反応には、闘争と逃避、摂食と生殖があります。このうち闘争と逃避については既に述べたので、今回は残り二つについて探っていきましょう。まずは、食欲について。
私にはそんな経験が一切ないのですが、世の中の人間の大多数は、ストレスに晒されると食欲が増減してしまうそうですね。そして、ストレスによって食欲が減る人よりも増す人の方が多いのだとか。
それにしてもなぜこんなことが生じるかと、食物には強力な鎮静効果があるためなのです。食べるとストレスから解放されるから、つい食べてしまう。けれども食べ終わると再びストレスに襲われるから……と、悪循環によって太ってしまうこともあるでしょう。これは逆を言うと、興奮状態にある相手に食べ物を与えると相手は落ち着くということでもあります。だからこそ食事中は話し合いに最適なタイミングなのです。
お次は性欲について。戦闘描写があるエロ小説を読んでいるとたまに、「戦った後は女を抱きたくなる」というようなことを言う登場人物と出会いますよね? 『「戦争」の心理学』によると、これは実に的を得た表現なのだそうです。食欲同様、過度のストレスに対する反応として、性欲も消失したり逆に激しく沸き起こってくることがある。特に戦闘に勝利した後は、自分の生を確かめたいという衝動(この辺りの心理は性暴力の回https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054884911968/episodes/16817139555528497615 参照です)のあまり、性行為に奔ってしまうのだとか。そしてそれは、ごく普通の反応なのだそうです。
もっとも上記の反応は、「交尾」のための戦いで他のオスに勝利したオスが、「戦利品=メス」を求めているだけ。つまりはオスの衝動ではないか、とも本では述べられていました。確かにそれもあるのでしょうね。
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