残虐行為 その①分類
今回からしばらくは、戦争にはつきものと言ってよい残虐行為のターンに入ります。という訳で今回はまず、どのような行為が残虐で、どのような行為が残虐でないかの分類と分析を、本に倣って個人対個人の殺人の場合に絞ってしていきます。一人の兵士による民間人の無差別虐殺とかは言われるまでもなく残虐ですし、その逆に複数の兵士が一人の敵をいたぶる、というのもやはり残虐なので、詳細に考える必要はないでしょうからね。
残虐度0の場合
こちらに対する殺意があり、なおかつ武装をしている敵を殺した兵士を、残酷だと罵る者はいないでしょう。殺人者の方もいわゆる「敵ながらあっぱれ」な戦いぶりな敵を殺した場合は、ほとんど良心の呵責を感じないそうです。また、倒した敵を讃えることで、偉大な敵を倒した自分もまた優れた存在であり、崇高な大義に身を捧げているのだと、自分の行為を合理化できるのだとか。
グレーゾーン
待ち伏せや奇襲など、戦略上必要かもしれないけれど正々堂々としているとは評しがたい殺人の場合、上手く合理化できないことがあります。降伏の機会も与えずに敵を殺したのだから当然ではありますが。近代以前では稀だったこの種の戦法による殺人は、時に一生のトラウマとなります。
ダークゾーン
戦争の最中、捕虜や民間人を近距離から殺害するという行為の是非を待ちゆく人に問うても、肯定する声などほとんど得られないでしょう。そしてそのことは、実際に戦場で戦う兵士たちも理解しているでしょう。それでも、捕虜の殺害はままある出来事なのだそうです。
もっとも、近距離の場合は敵が人間であることを無視して戦わなければならないのに、降伏された途端に敵を人道的に扱わなければならないなんて、思考の切り替えがうまくいかなくても不思議ではありません。自分や仲間の命がかかっている状況で、そこまで理性を保てる人間の方が少ないのではないでしょうか。敵が降伏する前に味方を沢山殺していたとしたら、なおのこと難しいでしょう。そのため、敵の小火器の射程に入るまで戦っていた場合、降伏しても受け入れられる確率は半分ほど、という意見もあるそうです。
捕虜殺しは明白な過ちです。が、戦闘の最中、興奮した勢いで捕虜を殺した兵士がいたとして、起訴されることはまずないというのもまた事実なのです。
ブラックゾーン
ダークゾーンぐらいまでは、探せば百人に一人か二人ぐらいは、肯定する人間を見つけられるかもしれません。ただし、ブラックゾーン――軍事的にも個人的にも殺人者にとって大した脅威とならない=殺さなくてもよい非戦闘員を近距離から殺害する場合は、肯定する人間を見つけるのは極めて困難になるでしょう。またこの殺人は、殺人者に強烈なトラウマを背負わせます。ブラックゾーンの殺人は、殆どの場合外的な動機で行われ、しかも犠牲者の人間性や殺人者の責任を否定するのが困難だからです。
ブラックゾーンの殺人の具体例として本では、テロリストの中では重要な地位を占めるに違いない女性を処刑した元兵士の体験が述べられていました。部下の誰もその女性を殺したがらなかったため、上官であった彼が仕方なくその女性の頭を吹き飛ばした。部下は皆、彼のことをさすがだと称賛したものの、彼はそのことを忘れられなくなったのです。
残虐行為とは、上記のような経緯で行われるそうです。次回は、残虐行為が行われる動機について述べる予定なので、よろしくお願いいたします。
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