周辺諸国の料理 その③

 今回もジョージアと同じくコーカサス地方の国の料理について。まずはアルメニアの料理を、「アルメニアを巡る25の物語」という書籍も参考にして述べていきます。

 アルメニア料理の、他の国の料理では滅多に見られない特徴は、異なる種類の動物の肉が一つの料理で同時に使われること。例えば、古くから伝わる「アルガナク」という料理では、鶏肉とシカ肉が使われるそうです。

 アルメニア料理でよく使われる食材は、肉ならば牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉。もちろん魚も(アルメニアは内陸国なので、イワナやマスなどの淡水魚が)食べられます。加えて木の実や麦、ハーブも利用されます。

 

 アルメニアの代表的な伝統料理には、肉料理ならトルマ(ドルマ)があります。トルマは主に羊の挽肉(米や木の実を加えることも)を塩漬けの葡萄の葉やキャベツで巻いたり、中身を刳り貫いたトマトやナス、ピーマンに詰めて煮込んだり蒸したりする料理です。トルマはニンニクと塩で味を調えたヨーグルトソースをかけて食べられるそうです。

 スープなら野菜や果物をたっぷり入れた酸味のある羊肉のスープ「ボズバシュ」や、ヨーグルトスープの「スパス」、ハチノス(牛の第二胃)を六時間ほど煮込んだ「ハシュ」が有名です。他にも、中身を刳り貫いたかぼちゃに米とドライフルーツを詰めて焼いた「ガパマ」、水分を抜いた生の牛肉にスパイスを刷り込んで乾燥させた「バストゥルマ」、小麦と肉を混ぜ合わせて煮込んだ「ハリサ」があります。

 またラヴァシュという、紙のように薄く縦・横ともに三歳児ほどはありそうなパンも知られています。ラヴァシュは小麦粉と水、天然酵母だけで作られるのでヘルシー。だけど鉄分とカルシウムが豊富。好きな物(焼いた肉など)を巻いてどこでも食べられることからファーストフードとしても位置付けられているそうです。一方でラヴァシュは伝統的な結婚式で、豊かな食を祈願する儀式で使われる(新郎新婦の肩に載せられる)、由緒あるパンでもあります。

 他、料理ではないのですがアルメニアでは杏が非常に愛されています。アルメニアの杏が美味しいことは古くから非常に有名だったようで、アルメニアで育てられた杏は世界一だと言われているそうです。また杏はリコーダーに似た伝統楽器ドゥドゥクの原料にもなります。アルメニアにおける杏は、ちょうど日本における桜のような存在なのですね。

 またアルメニアと言えばブランデーも有名です。加えて、ジョージア同様古くからワインで知られていた国でもあるのですが、ソ連時代の分業体制によりアルメニアのワインは衰退してしまいました。ですが近年再興しつつあるそうです。


 お次はアゼルバイジャン料理。アゼルバイジャン料理はイランの影響が強いそうです。特徴としては、

 

 ・ジョージアやアルメニアと比べて魚料理が多い。

 ・肉では子羊肉が最も好まれる。

 ・二十世紀になるまでは栗がよく用いられていたため、伝統的な栗の料理が美味しい。

 ・薔薇の花弁がしばしば使われる(シロップ漬けや砂糖漬けなど)。

 

 などが挙げられます。

 アゼルバイジャンの伝統的な料理には、近隣の民族の料理と共通しているものが多いです。串焼きシャシルィク(これはコーカサスから中央アジアにかけて広く見られる一品です)、前述のトルマ、チャナヒ(ジョージアの壺で煮る料理)、プロフ(炊き込みご飯)、ペリメニ(ロシア風の水餃子)など。が、作り方が微妙に違っていることがあるのだとか。

 たとえばプロフは本場のウズベキスタンのものとは異なり、炊きこんだご飯と具(肉や魚、卵にフルーツなど)は必ず別々の皿で出し、更に香草も別の皿に盛って出すというスタイルなのだそうです。またアゼルバイジャンの伝統的な食事は前菜→果物(スモモなど)を軽く焼いたもの→スープ→メイン→デザートという流れのため、時に三時間以上も要するのだとか。

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