周辺諸国の料理 その①
今回からはロシアの周辺諸国の料理の特徴について述べていきます。まずはウクライナの料理から。
ウクライナ料理が独自の形式を成したのは十八世紀頃のこと。ウクライナ料理で多様される食材は豚肉、
ウクライナ料理は周辺の様々な民族の料理から影響を受けているそうなのですが、ロシア料理の影響はあまり見られないそうです。また古いロシア料理にはない(ロシアでは
ウクライナ料理のもう一つの特徴は、
前述したようにウクライナでは小麦粉を使った料理が多いのですが、「ディカ―ニカ近郊夜話」にもウクライナの小麦粉料理が出てきました。文中で団子と訳されていたガルーシカと饅頭と訳されていたヴァレーニクがそれです。
ガルーシカは牛乳かブイヨンで茹でる団子のことで、簡単な家庭料理に属します。ガルーシカが浮いてきたら冷めないうちにバターかスメタナか脂につけて食べるのです。
ヴァレーニクは大き目の茹で餃子のようなもので、中身はトヴォロークだったり果物だったり、キャベツやキノコ、ジャガイモだったりと色々です。
ヴァレーニクの作り方はこんな感じです。小麦粉に卵と冷水を混ぜた生地をこねた皮を五センチ四方に切り、具を入れたら対角線で折って三角形にして塩ゆでします。浮いてきたら掬って熱いバターをかけ、具が果物であれば特製のシロップを、そうでなければスメタナを付けて食べます。
他、ウクライナらしい料理にはクリスマスイヴのディナーである「クチャ」があります。これはディカ―ニカ近郊夜話では「蜜飯」と訳されれていたとおり、小麦の穀粒に蜂蜜とケシの実を加えて作られるプディングです。クチャはウクライナに正教が導入される以前から作られていた古い料理であり、クリスマスの料理とされた後も祖先の霊を慰めるためという異教的な要素を残しています。
ウクライナでは、クリスマスには十二使徒にちなんだ十二品の料理を出すのが望ましいとされているそうです。が、いくらクリスマスでも十二品も用意するのは大変なのか、縁起がよいとされる数の九品や七品で済ませることもあるそうな。
クリスマスの料理はクチャの他、やはりケシ粒を散らした丸いパン「コラチ」。これはパンの回その②で述べた「カラーチ」のことかもしれません。また、クリスマスの時はウクライナが本家であるボルシチに、ウクライナ語で「小さな耳」を意味するワンタンのような料理・ヴ―シュカを入れます。ヴ―シュカの具は炒めたキノコとタマネギで、普段はブイヨンに入れて出されるのですが、クリスマスでは特別なのです。
他、魚のゼリー寄せとマッシュルームのソースを添えたロールキャベツ・ホルブツィと、前述のヴァレーニクも欠かせません。スイーツ系だと、ウズヴァルというコンポートと、酵母を使って作る薔薇の花弁の砂糖漬け入りドーナツ「パンプシカ」があります。
お次はベラルーシ料理です。ベラルーシは長く大国に支配された複雑な歴史のゆえか、これがベラルーシ料理というスタイルが形成されたのは十九世紀も末のことだったのだとか。
伝統的なベラルーシ料理の特徴には、穀類では燕麦(オーツ麦)が専ら用いられ、酵母が知られていなかったこと。またジャガイモが非常によく使われることがあります。
ベラルーシのジャガイモ料理の代表は「ドラニキ」という、すりおろしたジャガイモの生地に穀物の粉と卵を混ぜて焼くものなのです。が、他にも二百以上のジャガイモ料理が存在するのだとか。ベラルーシはロシアよりも早くジャガイモが導入され、しかもベラルーシのジャガイモは高品質で美味しいものだったため、ここまでジャガイモ料理が発展したのだそうです。
ベラルーシの肉料理では豚肉とラードをよく使います。伝統的なベラルーシ料理は、素材が野菜でも肉でも形がはっきりしなくなるまで煮こむ、どろどろとしたものが多いのだとか。
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