第二の料理

 新年明けましておめでとうございます!  

 とうとうメインディッシュに入りました。と、言ってもこれから述べる「第二の料理」(「温かい料理」とも)は、ロシアのコース料理の体系において「第一の料理」より重要な存在というわけではありません。説明のため、他の国の料理に当てはめて考えたら、メインディッシュという言葉を当てはめるのが適当だろう、というだけで。元来ロシアのコース料理の体系には、「メイン」という形容詞は含まれないそうです。


 第二の料理の主役は肉か魚で、ともに種類は色々です。魚は省略させていただきますが、肉なら牛、豚、鶏、羊の他にウサギ、鴨、ヘラジカ、ウズラなどの野生動物の肉も食べるそうな。ジビエってやつですね。私の地元でも、ハントされた猪や鹿の肉が売られています。私はたまに、このまま少子高齢化が進むと地元には人よりも鹿が多く住むようになるのでは、と考えることがあります。

 話が少々逸れてしまいましたが、材料の種類同様、調理法もまた様々(ただし、味付けはあくまで素材の味わい生かすためにシンプル)なので、結果として多種多様な料理が第二の料理には含まれることになります。ロシア国外に広く知られている数少ないロシア料理・ビーフストロガノフも第二の料理です。

 ただ、ビーフストロガノフは古来から伝わる伝統料理ではなく、比較的新しい創作料理になります。ビーフはそのままの意味(ロシア語では牛肉はベフですが)。ストロガノフは、十六世紀から十九世紀にかけて権勢を誇ったロシア有数の名門貴族ストロガノフ家にちなんで。ストロガノフ家のコックの誰かが考案したため、このような名になったのだとか。


 ちなみに、ロシア史で十六世紀らへんは超アツい時代です。かの有名なイヴァン雷帝は1533年から1584年にかけて在位し、1598年にはリューリク朝の嫡流が断絶します(嫡流が途絶えただけで、男系子孫は現代にも存在します)。

 そして、イヴァン雷帝の息子の義兄であったボリス・ゴドゥノフがツァーリに選ばれたもののすぐに国民の支持を失い、一方死亡したはずのリューリク家の皇子ドミトリーの生存説が囁かれはじめ、やがて偽ドミトリーが出現しました。ゴドゥノフ家は失脚し、偽皇子(初代。なお、偽ドミトリーは三世までいます)はモスクワを占拠して即位するがすぐに暗殺され、リューリク家の末裔である大貴族ヴァシーリー・シュイスキーが血筋を理由に即位したものの地方貴族の反抗を招き……。

 という感じで「動乱時代」が始まり、そうして1613年にぶっちゃけ知名度はリューリク朝より断然上だろうロマノフ朝が始まるのです。ロマノフ家は、イヴァン雷帝の最初にして最愛の妻の実家です。ストロガノフ家の祖先は農民なんだそうですが、その家系がロシア有数の貴族と呼ばれるまでのし上がれたのは、こういった時代背景も関係しているかもしれませんね。


 話しを元に戻しますね!

 魚については魚の回で触れたから流して、肉料理について語っていきたいと思います。

 ロシアでは元来、肉とは丸ごと焼くか幾つかに切って煮たり焼いたりするもの。挽肉料理は、やっと十九世紀から二十世紀にかけて移入されて普及したそうです。その後、肉挽き器が出回ったため、挽肉料理もメジャーな存在になったのだとか。

 肉を丸ごと焼くなら、インパクトと華があるのはやはり子豚の丸焼き。内臓を取り除き蕎麦のカーシャを詰めると、ロシアらしい趣がでます。ソースには、小麦粉でとろみをつけ、蜂蜜を加えたツルコケモモの汁を。ガチョウを同じような手順で丸焼きにしても。詰め物のカーシャに、小さく刻んだタマネギや林檎を炒めて混ぜてもよいでしょう。

 ロシアでは昔から野鳥が食卓に登ることが多かったそうです。雉に雷鳥、鴨、ヤマシギ、山鳩、ムナグロ、ウズラ。などなど。こういった野鳥の料理は祝祭日を豪華に彩っているのだとか。そういえば私の同級生が、ヒヨドリと雀は美味しいと言っていたことを思い出してしまいました。

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