十二冊目 美味しいロシア料理

ロシア料理とは?

 ロシア料理と聞いて、皆さんは何を思い浮かべられますか。ボルシチ、ビーフストロガノフ。料理ではないけれど、ピロシキかラズベリーのジャムが乗ったクッキー。ざっとこんなものですよね。あと、飲み物だけどウォッカ。ですが、それ以外となると途端に曖昧模糊としたイメージしか思い描けなくなる方が多いのではないのでしょうか。常々、色々なファンタジーが増えてほしいと願っている私としては寂しい限りです。

 で、ロシアの食文化についてもっとたくさんのことが世に知れ渡ったら、私好みのファンタジーが増えるのではと考えた次第なのですね。ファンタジーの描写で「食」って結構重要な位置を占めていますし。という訳で今回から、主に「世界の食文化⑲ ロシア」という本に載っている事柄を、その他の本の内容も交えつつ纏めていきますのでよろしくお願いいたします。

 と、いっても一口にロシアと言っても、私たちがロシア人と聞いて真っ先にイメージする東スラヴ人の他にも多様な民族がいます。また、東スラヴ人はロシア以外にもウクライナやベラルーシで主要な位置を占めておりますので、歴史的にロシアと深い関係がある国の料理について触れることもあります。


 では、前置きはこれぐらいにして、早速ロシア料理の目だった特徴について見て行きましょう。


1.塩漬けや酢漬けの野菜やキノコが、そのまま漬物としても、料理の材料としてもよく用いられる。

2.前菜とスープの種類が豊富。具だくさんのスープはロシア料理には欠かせない。

3.大きさ✕形✕中身(肉、野菜、キノコ、卵、果物などなど)=様々なパイが作られる。ピロシキもパイの一変形。

4.料理の味付けは基本的に塩コショウのみとシンプル。だが、香草ハーブをふんだんに用いる。

5.果物の保存法の一つとして、甘く煮る「ヴァレーニエ」が好まれる。


 以上が昔から変わらないロシア料理の基本的な特徴です。が、他にも「ビーツやライ麦をよく用いる」「野禽をよく用いる」「川魚を使う料理が豊富」「フランス料理の影響を大きく受けている」などの特徴もあります。では、どうして上記のようなロシアの食文化の特徴が生み出されたのでしょう。その要因は、大まかに以下のように分けられます。


1.気候的・自然的要因

 ロシアは大部分が北方に位置し国土が広大なため、自然寒冷地で生育する食材や森で採取できる食材(キノコやベリー類)、狩猟で調達できる野禽類の出番が多くなった。川や湖で獲れる淡水魚を利用した料理も発達した。また保存食も発達した。

2.地理的要因

 現在のロシア料理は、モンゴルや中央アジアにコーカサスなどの東方からと、ピョートル大帝の近代化政策に伴って入って来たヨーロッパつまり西方からの影響の下に成り立っています。つまりロシアは、食の東と西がせめぎ合う場なのですね。

3.宗教的要因

 十世紀にウラジーミル一世によりキリスト教の東方正教が国教とされてからロシア革命まで、ロシア人の大部分の食生活は宗教に影響されていました。つまり、肉や乳製品を摂取してはいけない斎戒と肉食が許される期間が交代するという、メリハリのある食生活のリズムが形成されたのです。加えて、斎戒の期間も食べられる野菜や魚、穀類、キノコなどを中心とした料理が発達することになりました。

4.歴史的要因

 ロシア革命後の共産主義イデオロギーの導入により、ロシアの食生活は決定的な影響を受けました。それまでの食文化が途切れてしまった所もあるようです。けれど、ポスト共産主義時代の現代においては革命以前の食文化が復興しつつあるそうな。と、言ってもこの本が発行されたのは2006年なので、2021年現在では食文化の復興が概ね完了したところもあるかもしれませんね。


 これらの要因もあくまで大ざっぱなものにすぎないので、これから一緒に詳しく見てまいりましょう!

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