廃娼運動と法律 その⑤
気が付けば一年以上も続いていたこの章ですが、そろそろ終わりにして次の章に入りたいので、かなり巻いて今回で終わらせます。本の残りの部分も、創作に役立ちそうなことはあんまり書いてなかったので。あと、なんだろう……さすがの私も、人間の醜悪さから、一時離れたくなったんですよね。
ちなみに、私がこの章を始めたのは自創作の参考にしようと思った(娼婦がヒロインの長編百合をいつか書きたい)からなのですが、読者様の中に自創作でこの章を参考にしました~という方って、いらっしゃるんでしょうか? いらっしゃるとしたら結構エグ……私が好きな感じの物語になっているのは間違いないと思うので、教えていただけると嬉しいです。私好みの物語を増やす。これもまた、私が知恵袋の更新を続けている理由の一つなので。可愛い子には泥沼でもがき苦しんでほしいですよね!
あと、私が好きなお話繋がりで、私が中学生の頃ハマって、今でも大好きな骨太大河少女(に次々とえげつない試練が襲い掛かる)小説「流血女神伝」がサンデーうぇぶりでコミカライズされていたので、興味を持たれた方はぜひぜひ読んでみてくださいませ~。主人公のカリエが原作の設定通り「愛嬌はあるけど並みの顔」だけれど「ころころと変わる表情が魅力的で可愛い」のが最高に信頼できるし、実際めちゃくちゃ面白いです。原作はもう完結していますので、骨太なストーリーを楽しみたい方は、原作の方もぜひ。
……そろそろ本題に入りますね。
前回述べたように、イギリスでは売春同意年齢を十六歳に引き上げる法律が可決されました。その後さらに犯罪法改正条例というものが採択されたのですが、この法律は若い女性を(性的なことに)誘うことができる法的な年齢を引き上げただけでなく、大人同士が合意した上でこっそり行う同性愛をも法律違反としていました。
また更に、十六歳未満の少女と性交渉した少年は、たとえ彼が相手の少女より年下であっても笞打ちに処されると決められていたのでから、はっきり言って行きすぎ・やり過ぎです。ですが、この「ある目的のために作られた法律が他の性行為にまで拡大適用される」という傾向は廃娼運動全般に見られる特徴でした。運動家たちの主な関心はもちろん売春だったけれど、機会があればポルノや同性愛、避妊具の販売禁止運動を行おうという者もいたのです。
なにはともあれ、1899年にはロンドンで白人奴隷売買に関する国際会議が開催されました。次に、1902年にはフランス政府が十六か国の代表をパリに招き、婦女子を白人奴隷売買から保護するための国際条約を起草。1904年には十三か国が批准し、後にアメリカもこの条約に参加しました。
アメリカは、1907年に売春を目的として外国人の女性を輸入することが禁止するという報率が成立しました。この法律は更に、入国後三年以内に売春に関わっていることが判明した外国人の女性は国外退去処分にする、という風に改められました。
そして1910年には、1907年の法律の改正案の三年の制限を外し「売春によって生計を立てている」者全てを排除するという報案が国会を通り、更に「不道徳な目的」のために州から州への女性の移動を助けた場合は重罪に処す、という法律も成立しました。
ただし、これらの通称「マン法」はかなり拡大適応されてしまい、金銭が絡まない性行為や、女友達との単なる旅行まで有罪とされるという、道徳強化のための法律へと変貌してしまったのです。こうした行き過ぎた傾向は1944年になるまで転換されることはなく、しかも娼婦は罰せられるが客の男はお咎めなしという新たな二重規範を生み出すことになってしまいました。
また、一連の売春取り締まり法を実施する過程で、階級的な偏見が制度化されてしまいました。取り締まりにあたる中産階級の多くが、不特定多数を相手に行う性行為は売春だと見なしたからです。
アメリカのような売春の完全禁止を求める風潮は海の外には広がりませんでした。1949年の国連の総会でも、政府による売春統制の禁止や、売春防止のために協力すること・娼婦が再び社会に溶け込めるようにすることなどが政府に求められていますが、売春を無くせとまでは言われていません。あと色んな動きがあって、現代社会に繋がるわけですね。というわけで、この章はこれで終わりです。
ほんとは「売春の社会史」には全然触れていない章があるのです。が、その章はこれまでの総まとめ+「売春の社会史」が書かれた時点での未来への展望といった内容でしたので、割愛してもいいだろうと思いまして。
最後になりましたが、皆さま一年以上もこのえげつない話にお付き合いいただいてありがとうございます!
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