古代オリエント その⑥
前回は古代エジプトでもやっぱり女は男より下に置かれていたという話でしたが、それでも古代エジプトの女性は、メソポタミアの女性よりもはるかに自由でした。大多数の女性は滅多に公の場に出てこないけれど、少数ながら重要な地位に就く者がいたそうなので。例えば古代エジプトには一家の家長を務めた女性もいたし、女性の書記が少なくとも一人はいたそうだし、王妃や王女の中には文字を書ける者もいたそうな。まあメソポタミアにも少数ながら女性の書記がいたと考えられていますし、初代アッカド王サルゴンの娘エンへドゥアンナ王女は才媛として有名ですけどね。でも、古代エジプトには存在したらしい大食堂の女支配人とか、かつら工場の女経営者とか、歌手グループの女リーダーとか、織物工場の女監督とかは、確かにメソポタミアにはいなかったのでしょう。ところで、ヒエログリフと楔形文字って、習得するのはどちらが難しいのでしょうか。
そういえば、上記の古代エジプトに少数存在したバリキャリ? の一例として「王宮のハーレムの女主人」が挙げられていたのですが、これってつまり「王妃」のことなのでは? もしくは、王妃の他に後宮の女たちを監督する役割を与えられた女性がいたのか、と解釈に迷ってしまったのは私だけでしょうか。
古代エジプトにも神殿に抱えられた奴隷娼婦はいて、しかもその規模はメソポタミアを上回っていたそうです。なんでもエジプト新王国・第二十王朝二代目のファラオ・ラムセス三世は多くの捕虜を連れてきて、男は穀物倉に、女は神殿に仕えさせたそうですから。また、神殿の外の楽師や踊り子を務める女性たちは、一種の売春婦だったのだろうと考えられてもいるようです。でも一般の女性たちも、宗教的なお祭りになると普段課せられている禁制のいくつかが解かれるので、自分から進んで男性に身を任せることもあったそうな。
上記の諸々から鑑みるに、恐らくですが古代のエジプトは、メソポタミアよりもそういったことに関して「ゆるい」社会だったのでしょう。そもそも、古代エジプトでは売春を恥ずべき事だとはあまり認識していなかったのかもしれません。なぜ私がこのように考えるかと言うと、古代エジプトには王女が売春したという逸話が残っているんですよねえ。
クフ王は、自分のピラミッドを作る資金が足りないことに気づいて、娘に売春させて、得た金は自分に渡すように指示をした。現代だったらお巡りさんにばれたら120%捕まる、とんでもない指示ですが、命令された娘の方は全然嫌がらずに父の命令に従ったそうです。あくまで言い伝えでは。ただ王女は、自分の努力の証が残るようにと、客たちに花代の他に石を一つずつ持ってくるようにと言って、そうして集めた石で王女自身もピラミッドを作った。王女のピラミッドは、大きさが150フィート=45.72mにもなった。
……王女のピラミッドの大きさ云々は明らかに作り話でしょうが、古代エジプトの人々が売春を恥ずべき事だと認識していたのなら、こんなある意味あっぱれな逸話を後世にまで語り継ぐでしょうか。他、ヘロドトスは前述のラムセス三世の王女の、またしてもピラミッド絡みの売春の話を記録していたりします。この逸話、三割どころか七、八割は本当にあったことか疑ってかかった方がいいのですが、色々とはっちゃけていて面白いです。ちなみにあらすじはこんな↓感じです。
大変☆ ラムセス三世のピラミッドに墓泥棒が入ったぞ! 実はピラミッドを作った職人が、副葬品を盗むための秘密の抜け穴を作っていて、職人の息子二人が盗みに入ったんだ!
自分のピラミッドが荒らされたことを知ったラムセス三世は激おこぷんぷん丸になって、ピラミッドに罠を仕掛けた。すると墓泥棒兄弟の一方が罠にかかっちゃった! 無事だった方は、このままでは自分の身元も割れてしまうからと、兄弟の首を刎ねて逃亡! そこでラムセス三世は今度は娘に、売春宿に行って客たちに代金の代わりにそれまでの人生で一番狡猾にやりおおせたことを訊ねるように、と命じたんだ。
王女はそのうちビンゴの男に出くわしたが、男はすんでのところで逃げ出しちゃった! するとラムセス三世はこの盗人に恩赦を公布し、彼が盗賊をやめて娼婦をやっている自分の娘と結婚できるようにしたんだって。めでたしめでたし☆
後半から話がぶっ飛び過ぎて付いていけませんよね。前回終わりの方でちらっと触れた戦争の神様が妊娠出産する話といい、古代エジプト文明偉大すぎる……。だってあれ、ファラオと深い関わりがあるホルス神がいかにして王位を得たかという、メジャーもメジャーな神話のエピソードなんだぜ実は……。
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