庶民の女性たち ②商家の女性たち+他

 世界帝国たる唐の時代には商業が発展したので、大商人の妻ならばそれこそ王侯貴族並みの生活を送ることも可能でした。そんな裕福な商人の妻の悩みといえば、商売のために東奔西走する夫がいつ不慮の事故や盗賊に襲われてしまうかということ。あとは、時に数年も家を空ける夫に忘れられてしまうことでした。ここらへんの悩みも王侯貴族の夫人と同じですね。ということで、詳しい説明は省きます。

 また、唐と言えば真っ先に連想する胡姫でなくとも、唐代の女性は料理屋、酒屋、旅籠を開いて、また小物売りとなって、自ら商売することも多かったようです。

 ……おおっとぉ、ここで語るべきことが尽きてしまいました! 最低目標としている文字数にはあと千文字ぐらい足りないのに! こんなことなら、前回のやつと一緒にまとめとけばよかった!! などと後悔してももう遅いので、今回はこれから「中国社会風俗史」という本を参考に、私が今現在持ち合わせている範囲の中国の結婚儀礼について、気になることをまとめていきたいと思います。


 まず、皆さんも既にご存じでしょうが、中国の陰陽思想は男は陽に、女は陰に属するとされています。ただし「道教の房中術」という本によると、完全なる陽、完全なる陰という人間はいません。現代医学でも100%の男、100%の女というのはいないとされていますから、興味深い一致ですね。なお、純陽は仙人、逆に純陰は亡霊だとされているそうです。

 男の身体は陽だけど、精液だけは陰に属している。逆に女の身体は陰だけど、膣分泌液は陽に属している。なお、女は達する時に出す液体が最も陽を含んでいるので(女が達した時に出る唾も、不老長寿の薬になると考えられていたそうです)、性行為でこの陽の気を吸い取り、あと丹薬服餌とか頑張ればいずれ仙人になれると道教の一派では信じられていたそうです。また、これだけだったら女は男から陽の気を採られて、自分は何も採れないなんて損だなあ、と思ってしまいますが、そんなことはありません。実は陰の気でも養生できます。なので自分が女の陽の気を取るつもりで経験豊富な女に挑んだら、逆に陰の気を採られて、病気になることもあるんだよ、と警告されてもいます。

 男は達したくなってもグッと堪えて、自分は気を漏らさずに相手の気を吸い取って、不老長寿を目指そう☆ というのが大ざっぱな房中術の教えです。そのための愛撫の方法とか、相手が感じているかどうかの見分け方とかが紹介されていて、「道教の房中術」は大変興味深い本でした。なおそのサインの一つに「男の乳をいじりたがる」というのがあって、「まじかー。だったら、中国史に名を残した猛々しい武将とかも、閨では妻や妾に乳いじられることがあったのかー」と私は大変興ふ……感銘を受けました。


 ……話が大分それましたね。とにかく、婚礼というのは男(陽)が女(陰)を迎える儀式なので、昔は日暮れから行われていたそうです。ただ、唐からは暁に行われるようになったのだとか。この理由は特に記載されていなかったのですが、この婚礼が行われる時刻の変化には、「唐代では、首都、もしくは首都だけでなく地方でも夜間の通行が禁止されていた」という事情も関係しているかもな、と勝手に推測しております。この夜間の通行禁止は結構古くから(紀元前千年から紀元前二百五十年頃まで続いた、周代の記録もあるそうです)行われているそうなので。しかも、破った場合の罰は結構重いものだったとか。そしたら大都市ではいつ花嫁は花婿の家へと出発すればいいのか、という問題が当然持ち上がりますよね。もしも花婿の家に行く途中で何かハプニングが起きて、定刻までに辿りつけなかったら、捕まってしまうかもしれないなんて。だから比較的昏くて、でも取り締まられる心配がない時間帯――明け方にやるようになったのかなあ、と。


 また、婚礼というのは古代では喜ぶべきことではなく、娘を嫁がせた家では離別を悲しんで三日間は夜も灯りを消さなかったそうです。一睡もせずに悲しんだ、ということでしょうか。また結婚して跡取りを儲けるというのは、親が老衰したから行うものなのだと考えられていたため、妻を迎えた側も三日間は音楽を奏でなかったのだとか。親が老いて弱ったのに音楽なんて奏でてられるか、ということでしょう。でも、古代以降では普通にドンチャン、ガヤガヤ祝われてたみたいですけどね!

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