　リッチでゴージャスでパワフル。でも悲しみの色濃い影が差すお姫様編も前回で終わり、今回からはタイトルの通り貴族や官僚の家の女性の生活についてまとめます。官僚といっても、中には富貴とは到底言えない下級の官僚もいますが。たとえ下級でも、唐代では「官」の家に属する女性は「民」の女性とは違う区分に属していたそうなので。

　では、さっそくお偉いさんの家の女子の生活覗いちゃお――の前に、ここでお姫様編①でちらっと語った、皇帝の妃嬪以外の偉い女性に関する規定・外命婦制についてまた語らねばなりません。

　外命婦制は以下のようにお偉いさんの家の女性を規定していて、それぞれの女性には封号も授けられていました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　母と妻

親王の　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　妃

文武の一品官と国公（中国の爵位の一つ）の　　　　国夫人

三品官以上の官僚の　　　　　　　　　　　　　　　郡夫人

四品官の官僚の　　　　　　　　　　　　　　　　　郡君

五品官の官僚の　　　　　　　　　　　　　　　　　県君

※その女性が母親の場合は、～国「太」夫人、～郡「太」夫人など、「太」の字が付け加えられていました。

　なお、上記はあくまで夫や妻が偉かった場合であって、自身の功績で封号を授与された女性は別に封号を加えて、～品夫人、～品郡君などと呼ばれていたそうです。ただし、封号は基本的には正妻にのみ与えられるものでした。

　唐の命婦は大抵、夫や息子が偉い／偉くなったか、夫や子が君主のお気に入りになったから封号を授けられていました。その他、楊貴妃や則天武后の親族の女性など、家族の誰かが皇帝の后となったために封号を授与された例も。ところでこの封号、当然と言えば当然ですが使いまわされていた（国や地域の名前って、そりゃ限りがありますからね）ようで、則天武后と楊貴妃の姉妹の一人はそれぞれ韓国夫人と呼ばれていました。この他少数ですが、皇帝の乳母や上級の宮女の中には、国夫人や郡夫人に封ぜられた者もいるそうです。

　もっとも希少だろう、自分の功績によって封号を授与された女性は、契丹の侵入に抵抗して「誠節夫人」に封ぜられたある刺史（州の長官）の妻や、突厥の侵入の際に同じく功績を上げた「徇忠県君」に封ぜられたある県令（県の長官）の妻などがいます。あと、則天武后は、故郷の八十歳以上の女性を郡君にしたそうです。則天武后もたまには優しいことをするんですね！

　ところで「韓」という国は唐以前の中国にも存在したし、「誠節」はあまりヒットしませんでしたが「徇忠」ならいくつかヒットしたので、これら二つも地名だったのかな～。と思います。ただし州と県とかそんなスケールが大きなものじゃなくて、街とか村とか、取り立てて記録に名を残すようなものではない規模の地域の名前だったのだろう、と。まあ、証拠は何一つとしてありませんが。

　命婦となった女性は朝廷が品級に応じて一定の給金を支給するのですが、全ての命婦がお給金を受け取ったかは不明だそうです。

　玄宗の乳母は三品の官僚に準じて俸給を受け取ったそうです。三品の官僚というのがどれくらいエライのかは分かりませんが（私の調べ方が悪いのか、検索してもあまり情報がヒットしなくて諦めました！）中国の官僚制って結構細かく分かれてるし、その上から数えた三番目なら、結構偉かったんじゃないですかね（適当）。

　また、これは宋代の話ですが、宋では命婦は月ごとに銭と米が、春と冬には絹と真綿が、それぞれ大量に支給されていたため、唐にも類似の制度はあっただろうと推測されているそうです。あとは特別に化粧料を貰った者もいたそうですが、これは限定的な事例だろうし、そもそも記録が事実ではない可能性もあるのだとか。だから化粧料については適当に受け流しておきます。

　とにかく、上記の説明だけを考慮すれば「命婦になったら何もしなくとも給料もらえるなんて、ウハウハじゃん！」と早とちりしてしまいますが、則天武后が皇后になった頃から命婦が皇后に朝見する儀式が始まり、その他各種記念日や祝典の際も、皇后や太后に朝見しなけらばならなかったそうなので……メ・ン・ド・イ☆　

　外命婦で皇太后に朝見する儀式に欠席した者は、その夫や子の給料が一か月分取り上げられたそうです。だから面倒でも朝見サボれない！　非常にめんどくさいですね！　遠方に住んでた場合とか、どうだったんでしょう？　

　官僚の妻となって命婦に封ぜられ、宮中で謁見を賜ることは、最大の名誉の一つだったそうです。でもめんどくさい！