後宮の女性たち 宮女たち①


 宮中の色々な事務をこなした女性たちは、唐代では「宮人」「宮女」「宮娥」「宮婢」と呼ばれていました。宮女たちは后ではなくてただの事務係・下働きに過ぎない。だから、顔や皇帝の好みに適うかを気にする必要はなく、家柄と性格が良く、才能がある女性を選んで宮女にしていたそうです。いわゆる「お手伝いさん」だから主に手を付けられないのかといえば、全くそうではなかったのですが。

 また、宮女たちはなにも皇帝の側のみにいるのではなく、各地の離宮や別館に親王府、皇帝陵にも配属されていたとか。離宮とかに宮女(≒召使)がいるのは分かるけど、陵って墓のことですよ。どうして墓に宮女が配置されるんでしょうね~。非常に薄暗い何かを感じてしまいますね~。と言う訳で、陵と宮女に関することは次回述べていきます。


 后妃たちに「内官」という制度があったように、宮女たちにも「宮官」という制度がありました。

 宮官は宮女たちのトップで、後宮の六局(尚宮局、尚儀局、尚服局、尚食局、尚寝局、尚功局)の全てを管理していました。彼女らには以下で述べる品級と給与が与えられ、礼儀や人事に法規や財務に衣服住、更には旅行や出張の手配といった宮廷の事務をこなしたのです。

 六局の各主席女官(それぞれ尚宮、尚儀……後の四つも何と呼ばれているかはお分かりいただけますよね? だから、めんどくさいので詳しい説明はパスさせてください)が、六局の尚書(長官)となります。

 そしてその下には二十四司という位があって、二十四司の他にも、二十四典、二十四掌、宮正、阿監、彤史、女史と呼ばれる女官がおり……。 

 非常に面倒くさいのですが、ググってみても二十四司全て列記してるサイトにヒットしなかったので、以下に書いていきます。


 司記、司言、司簿、司闈

 司籍、司楽、司賓、司賛

 司宝、司衣、司飾、司使

 司膳、司醞、司薬、司饎

 司設、司輿、司苑、司灯

 司制、司珍、司綵、司計

 

 ワー、私、頑張った!!! 私、偉い!!! ……と浮かれたところで、ちょっとした推論に入らせて頂きます。先に断っておきますが、根拠は何一つありませんが。 

 唐代には三省六部という制度によって政治が行われていました。門下省、尚書省、中書省に分かれて、尚書省の下に実務機関として六部が置かれる。そして、六部の下にはそれぞれ四つの司が置かれていました。先ほどは本にそう書いていたので「六局の下に二十四司が置かれる」と書きましたが、後宮の運営がその時代の政治制度を反映させ、参考にしたものだったのなら。実際は一つの局の下に四つの司が置かれていたのかもしれませんね(※だから、二十四司はそれぞれ四つずつまとめ、六つに分けて列挙しました)。

 こういう風に

 

 尚宮……司記、司言、司簿、司闈

 尚儀……司籍、司楽、司賓、司賛

 尚服……司宝、司衣、司飾、司使

 尚食……司膳、司醞、司薬、司饎

 尚寝……司設、司輿、司苑、司灯

 尚功……司制、司珍、司綵、司計

 

 たとえば醞の異字体と思われる酝には中国語で「酒を醸す」「酒そのもの」という意味があります。まあ、根拠は何一つありませんけれども! だから、良い資料を見つけたら教えてくださいね~。


 こうして六局、二十四司に分属された宮女たちはそれぞれの家柄や容姿、特技に適した職務を与えられます。上級の宮女はだいたい近侍となって皇帝や后妃たちの身の回りの世話をする他、皇帝が政務を行う際は側に侍って、内廷から勅命を伝えることもありました。この役目は唐末には廃止されてしまいましたが。でもそれまでは、勅命を伝える係の宮女は、内廷の門を自由に出入りすることができていたようです。


 下級の宮女の場合は宮中の雑事を分担します。門の見張りや、掃除、庭園や灯火(灯火の管理はきっと司灯の仕事だったんでしょう)や倉庫の管理とか。裁縫や機織り、刺繍といった針仕事専門の宮女は、后妃の衣服を調達し、軍服を作る仕事もこなしていたそうです。

 また、唐代の宮中には内文学館という場所があって、宮女のうち文学の教養がある者に妃嬪や他の宮女たちの教育係をさせていました。中には、皇子や公主に駙馬(公主の婿)の教育係を務めたハイパー才女や、学士に任じられたスーパー才女もいたとか。

 こういった宮女のカーストの最上層に位置している方々は、宮殿の中では非常に尊敬され、外廷の官吏たちも彼女らに取り入って出世しようとしていました。更には、国政に関与できることもあったとか。でも彼女たちはやっぱり皇帝の家婢(婢は女奴隷という意味)に過ぎない。なので唐朝二代皇帝の弟は宮官のうち位が高い者には拝礼した方がいいと言われたところ、「どうして兄の家婢を拝しなきゃならないんだ?」と言ったそうです。この言葉に宮女の全てが表れている。

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