九冊目 唐代の女性たち――中国史上最も女性が自由だった時代

唐朝の女性と社会

 (近現代を除いて)中国が最も華やかで栄えていた時代といえば唐。唐は、中国史上唯一の女帝・則天武后や楊貴妃といった、歴史に深く名を刻んだ女性たちで有名な王朝でもあります。という訳でこれからは「高世瑜著:大唐帝国の女性たち」という本の内容を纏めていきます。


 中国……というか東アジアの近代を除く女性観といえば「三従の教え」とかそんな古臭いワードが思い起こされます。

 ですが唐代は末期にしか纏足(※)が行われなかったことや、儒教が人々の意識に及ぼした影響も後代に比較すれば小規模なものだったことから、女性は自由に外や宴の場に出て、お花見はもちろん、男に混じって狩やスポーツも楽しんでいたそうです。それどころか唐代女性の間では男装や胡人の恰好をすることが流行っていたそうな。あとは、唐代は恐妻が多く、時代風潮にさえなっていたとか。つまりそれぐらい家庭内での女性の地位が高かったということです。

 ※

 中国(というか漢民族社会)において足は小さい方が美しいとされたことから、女児のうちに親指以外の足指の骨を内側にボキッと折る+そのままぐるぐる巻きにして、足が大きくならないようにしていた風習のこと。

 纏足を施された足は「三寸金蓮」と呼ばれていたそうです。三寸ってだいたい9cmぐらいなんですけど、これぐらいを目指せということなのでしょう。24cmに近い大足の私は背筋が凍ります。


 纏足の主な目的として、

 1.足が小さい→足だけでは体重を上手く支えられない→バランスを取るために内腿の筋肉が発達→あえてどことは明言しないけれど締まりが良くなる! +あと、両足を合わせてできた窪みで挟んだり擦ったりして愉しんだりもしたらしいです。ナニをって? ……分からないなら分からないままでいましょうね!

 2.女性がちょこちょこ歩く姿が、往時の中国の男性からすれば庇護欲をそそった。

 3.他にも、臭いを嗅ぐとか、舐めるとか噛むとか、色んな愉しみ方があったんですよ~。めくるめくフェティシズムの世界です。

 4.一度風習になってしまったら、やっていない方がおかしくなる。纏足をしていないと嫁の貰い手がなかったりしたので、内心はどうあれやらざるを得なくなった。


 というなんともエグかったりフェティッシュなものがあります。性欲と性的好奇心のためにここまでした(させた)という事実がエグイですね。だって上手く歩けなかったら火事とか天災とかあと戦の時に逃げ遅れそうだし、というか某フリー百科事典によると、実際にそうだったらしいので。何より、子供でも考え付くような当然の結末を、当時の中国の男性たちが導けなかったはずはないのに。

 纏足は非漢民族の王朝である清の御代では皇帝によってたびたび禁止令が出されたものの、効果はありませんでした。


 ……大分本筋から逸れてしまったところで、話を元に戻します。

 なぜ唐朝がこれほど自由な気風だったのかと言うと、


1.シルクロード交易にイメージされる異民族との交流を行い、異民族の文化や風習を盛んに取り入れたから。

2.そもそも唐の皇帝は鮮卑という北方遊牧騎馬民族の出であったため、唐朝の社会は北方異民族の影響を強く受けていたから。


 という二つの理由が挙げられます。遊牧騎馬民族の女性は古代中国の女性と比べて地位が高く、比較的自由が多かったのです。基本家の中のことと農作業だけをやっている中国女性と比べ、遊牧民の女性は家畜の世話や狩をして、草原を駆けまわっていたので。


 明ぐらいになると「女は才能が無い方がいい」(おおざっぱな要約)と言われるようになりましたが、唐代は後代の憎むべき価値観とは無縁であり、上は宮女から下は婢女はしためまで広く文字を知り、詩や書を嗜んでいたそうです。

 また貞操観念は極めて希薄で、未婚の女子が婚前交渉するのも、既婚の夫人が愛人を持つのも少なくなかったとか。前述した則天武后は男妾を囲っていたし(則天武后は別格かもしれませんが)、公主(=お姫様)や皇后にすら愛人がいたとか。一体それでいいんでしょうか。さすがにフリーダムすぎるような……。


今回のスペシャルサンクス

・桐生操著「世界エロス大全」

纏足の愉しみ方について参考にしました。

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