その⑧
今回は近世の戦争を語るに避けては通れない道――爆傷(爆創)についてまとめていきます。映画とかではよくどっかーんと爆発したすぐ横を主人公とかが颯爽と歩いているでしょう? あれ、実はかなり危険な行為だったんですよ~という話です。
爆傷というのは一次的爆傷~四次的爆傷に分かれるので、以下でそれぞれの爆傷についてまとめて行きたいと思います。と言っても、主に一次的爆傷と二次的爆傷についてまとめていくのですが。なので、まずは三次的爆傷と四次的爆傷とは何たるかご紹介していきます。
三次的爆傷
衝撃波や爆風によって壁や地面に叩き付けられたり、構造物の倒壊に巻き込まれて負った創傷のこと。四肢の切断など。また、筋肉や骨、肝臓などの密度が高い組織に負ったダメージも含まれます。
四次的爆傷
一次的~三次的爆傷以外の爆傷。爆発時に生じた高熱による熱傷、発生した有毒ガスによる科学的損傷といった症状に加え、感染症の併発も四次的爆傷に含まれます。
ではここからは一次的爆傷と二次的爆傷を。
一次的爆傷とはざっくり語ってしまえば
「衝撃波によって空気を多く含む臓器――肺、腸、内臓、血管や聴覚器官に負った創傷」のことです。主に血管内に空気塞栓が生じたり、気胸になったり、結腸のような空気を含む臓器や鼓膜が破れたりします。他にも、眼底から出血したり、眼球が破裂したり、脳幹もダメージを受けたりしたりします。つまり、映画とかでよくいる爆心地付近を颯爽と歩む主人公は、結腸が破けたり、眼球が破裂したりしないとおかしいんですね!
一次的爆傷は衝撃波や急激な気圧変化によって齎される創傷なので、外見上では判断しにくいです。また、爆風の威力は爆心地からの距離の二乗で反比例するので、爆心地の側にいなければ安心です。ただし、車両、もしくは屋内では入射波と反射波が増幅されるので自ずから被害は大きくなります。
爆傷において最も深刻なのは、この一次的爆傷であると言われています。なぜなら一次的爆傷は爆発直後の現場ではなく数日後に現れ、その割には人体を透過した入射波は人体組織の中で反射波となって、内臓や血管に局所的ながら深刻なダメージをあたえていて、結果として手遅れになっているケースが多いから。つまり爆心地をノーガードで歩くヒーローは、後日目から血を(以下略)
これまでざっくりと述べていたように、衝撃波はまず入射波となって人体を透過し、水や空気といった密度が異なる界面に接すると反射波を生じさせます。実は入射波そのものは人体にさほどダメージを与えないのですが、この反射波というのが中々の曲者で、組織を破壊してしまうのです。つまり、空気を多く含んだ肺は一次的爆傷の影響を受けやすい。
肺胞が傷つき、酸素と二酸化炭素の入れ替えができなくなってしまえば、徐脈や呼吸障害、血圧低下といった症状が現れます。また、肺胞や毛細血管が傷ついてしまえば塞栓症が起り、結果的に脳や心臓をもダメージ負って最悪の場合死に至ってしまうのです。
ちなみに一次的爆傷と三次的爆傷はどこまでが一次的爆傷で、どこからが三次的爆傷かは曖昧だったりします。つまり、一次的爆傷のみならず三次的爆傷も致死率が高いのです。以上の点を踏まえ、1940年代に行われた動物実験(使用された薬量は32kg)では、以下のような結果が出ました。
爆発地点からの距離 結果
4m以内 動物は全て死亡→キリングゾーンは4~5m
5.5~6m以内 数頭に呼吸障害が確認されたが、1日から二日で元に
戻った。
6~16m以内 数頭が食欲不振に。
まあこんな感じです。また、いずれの実験でも動物は外見上は無傷でしたが、解剖してみると距離に応じて肺に潜血が生じているのが確認されました(一次的爆傷の症状)。つまり、爆薬の量にもよるけれど爆心地から4mと離れていない場所を平然と歩いているヒーローは、実は超合金性アンドロイドじゃないかと疑った方が(←しつこい)
キリよく纏められたので、二次的爆傷は次回まとめます。では!
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