その⑥
今回と次回は、引き続き「殺すテクニック」からシュラプネルとミニエーボールについてご紹介していきます。
ナポレオン戦争を機に、それまで戦場の主役だった剣、槍、弓は火砲と銃にとってかわられた。それはつまり、戦場で負う傷がより凄惨なものになったということですが、1803年火砲では榴散弾、1848年銃ではミニエーボールが使われるようになると、その傾向は益々激しくなっていったのです。
まず、日本語では
シュラプネル開発以前、1618年から三十年続いたその名も30年戦争では、一粒の重さが57~142gの弾が詰められた対人砲弾が使用されていました。こういった砲弾では砲口から300m以内の人馬を殺傷できるのですが、300mを越えると殺傷能力は著しく落ちていました。
上記の大型散弾銃の砲弾の他に、中空の鉄球に黒色火薬を詰めた炸裂弾も仕様されていたのですが、肝心の効果の程はと言うと……。音ばかりが大きくて、破片化した弾殻が広範囲に飛び散り、対象を殺傷する効果にはイマイチ期待できない。ちなみにこの飛び散った破片で敵を殺傷するという戦略、現代にもしっかり受けつがれていますよね。具体的にはテロとかに。
でも、私が寡聞なだけでしょうが、創作ではあまり見かけない考え方のような気がします。前のまとめで述べた、体内で破片化した骨が銃創を深刻化させるというのも。主人公が凄腕スナイパーになって友軍を勝利に導くという話はあっても、新型砲弾を開発したり、砲弾を破片化しやすくして、敵兵の被害を大きくして勝利するという話はあまりないような……。生々しくなりすぎるからですかね?
……まあ何はともあれ、砲兵たちは射程距離が長い新型の砲弾を待ち望み、イギリス軍砲兵部隊に所属していたヘンリー・シュラプネルが1787年に砲兵たちの夢を叶えたのです。具体的に何をしたのかと言うと、黒色火薬+200発のマスケット弾を詰めた新型砲弾――榴散弾を作りました。この砲弾の飛距離は2000mを越え、時限信管(詳しい仕組みはググりましょう!)が作動すると、砲弾の中から周囲60mの距離にまで届く弾丸を発射します。
当時、マスケット銃の射程距離(=殺傷能力を示す、有効射程ではない)が200m程度でした。つまり榴散弾は、それまでの10倍の射程距離と、200挺ものマスケット銃が一気に発射されるに等しい攻撃力を手に入れた……。つまり戦争は激化するし、被害はより甚大になりますね。
榴散弾は製造コストが高くつくことから、開発当初は軍上層部にはあまり快く受け入れられませんでした。ですが何年も実験を重ねた末、軍上層部の心を掴み、1804年オランダ軍との戦いに投入された榴散弾は非常に大きな成果を上げたのです。2km先から、200挺ものマスケットの一斉銃撃に等しい効果がある砲弾が放たれた――オランダ軍は戦闘開始間もなく、反撃もせずに降伏せずにはいられませんでした。
また榴散弾はナポレオン戦争においても投入され、スペイン独立戦争やワーテルローの戦いでも目覚ましい成果を挙げたのですが、第一次世界大戦を機に廃れて行きました。でもそれでも、面白い兵器だと思うので、皆さん創作にぜひシュラプネルを取り入れてみてください! シュラプネルという個人名由来の名前を出さなければ。榴散弾で通せば、ファンタジーにも登場させられるはず!!
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