従軍する女性たち

 どうも! 先週は風邪をひいていて、グロッキーになっていたため更新をサボった作者です! 頭が茹だっていて、軍隊BLのことしか考えられなくなっていたから、仕方ないんですね! 

 ん? 私がBLのことしか考えてないのは風邪をひいていなくてもじゃないかって? 仰る通りですが百合のことも考えてるので!!


 さて。今までは被占領地の女性たちのことばかりご紹介していましたが、戦地には占領地の女性もいたのです。彼女らは、補助勤務のためにドイツから被占領地にやって来た女性でした。こうした女性は、第一次世界大戦のドイツ以外の参戦国にもいて、フランスでは自動車の女運転手がいたそうです。ドイツ軍の補助勤務部隊の女性たちは、被占領地の(売春をしている)女と裕福な将校を取り合うため、被占領地の女たちからの評判は決して良いものではなく、「機関銃」と仇名されていたそうです。だったら、味方であるドイツ人兵士やドイツ本国での評判は良かったのかと言うと――それも決して良い物ではなく、この女性たちは「突撃隊娘」と呼ばれていたそうです。

 なぜドイツ軍の補助勤務の女性たちの評判が良いものではなかったというと、それはずばり彼女たちと将校の間に性的な関係があったから。彼女たちを娼婦として扱わなかった上官は、ごく一部の例外がいないわけではないけれど、「稀代の珍品」(カッコ内原文ママ)であったといいますから、だいたいの内実は想像できてしまいますよね。またその結果、ドイツ軍補助勤務部隊の女性たちの多くは性病に罹患してしまいました。まあそれも当然の結果ですよね。一般兵よりも性病罹患率が高い将校と関係を持っていたら(あるいは関係を強制されたら)どうなるかは火を見るよりも明らか。

 性病に罹患した補助勤務の女性は、周囲からはペスト患者のように扱われ、仲間からも見捨てられ、多くは売春婦になったそうです。この時代(第一次世界大戦前後)の、周囲から爪はじきにされる女性が、生きるために最後に採れる、もっとも手っ取り早い手段と言ったら、それしかありませんものね。


 ところで、「レクチャー第一次世界大戦を考える 戦う女、戦えない女」によるとこういった補助勤務のために従軍した女性たちはドイツやフランスだけではなくイギリス軍にも存在していました。この女性たちは、正確には入隊したのではなく――兵籍を得るのではなく、陸軍の要員として登録されたに過ぎない(女性が兵士になることへの、当時の世論の反発のため)のですが、それでも記録簿には「登録」ではなく「入隊」と記されていたし、また彼女らの心情としてもそうだったでしょう。ある女性は、「陸軍の構成員になりたいから入隊したい」と記した手紙を母親に送ったそうです。

  イギリスの陸軍女性補助部隊の主な任務は以下の五つの部門で成り立っていました。


・洗濯、掃除などの家事部門

・炊き出しや簡易食堂の運営を担う調理部門

・軍事物資の修理と回収を行う機械部門

・事務および通信部門

・戦没者埋葬部門


 他にも、救急車の運転を任されることもあったそうですが、こういった(埋葬以外の)仕事は、何も前線でなくとも女性が担ってきた、伝統的な・・・・女の仕事です。それでも従軍する彼女らは良くも悪くも銃後の女性たちとは違う目で見られていました。

 その「悪くも」の一例が、彼女らと兵士たちの間の性的関係を疑うというお決まりのもので、妊娠のために補助勤務の女性たちが次々に帰還させられているなどなどの、酷い噂が立てられもしました。しかし、調査委員会によって噂は根も葉もないデマであり、むしろ補助勤務の女性たちの規律は、銃後の工場などに勤務する女性たちの規律よりも遙かによく保たれていると結論づけられました。


 また、イギリス軍の補助勤務の女性たち自身も、上記のような攻撃に備えるために、数々の規則を作り自分たちを律していました。外出時は二人一組のペアを作る(つまり自由行動禁止)とか、門限とか。点呼後の、特別な理由のない外出の禁止とか。また、許可なく兵士と連れ立って歩いたり、並んで腰かけた女性は即解雇されていたそうです。きっちりしてる。

 彼女たちは、世間や共に働かく兵士たちからも様々なバッシングに晒されたそうなのですが、それでもドイツ軍の補助勤務の女性たちの状況と比べたらはるかにまし。というか雲泥の差ですよね。時代だって同じなのに。もしも、第一次世界大戦期のイギリス軍とドイツ軍、どちらかの補助勤務部隊として従軍しなければいけないとしたら、私はイギリス軍に入りたい。


 第一次世界大戦までのイギリスでは、男は志願して入隊すれば、自分の価値や国への忠誠心を示せた。けれども従軍するという選択肢を持たない女は、それ以外の形で国家への愛と献身を示さなければならない。それは自分の夫や息子に戦地に行くように促すことであり、前線に物資を送ることであり、戦争寡婦や孤児の支援を行うことであった。けれども、第一次世界大戦による男手不足は、それまで男の聖域であった職の多くに女を進出させた。従軍を拒否する「臆病者」がいる一方、果敢に従軍する女性がいるという事実は、それまでの男性優位社会に、僅かではあるが変革を齎した……と「戦う女、戦えない女」では述べられていました。戦争と女の関係は深い。

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