とうとう裁判が始まってしまった……
マインスイーパーの中毒性って恐ろしいですよねえ……。
以上、またしても週一更新の目標を破ってしまった作者からの言い訳です。申し訳ありませんでした! 以下から纏めに入るので許してください!
まず初めに、不能裁判の請求がされると、当該夫婦は教会の法廷への召喚の通知を受け取ります。そしてそこでお決まりの尋問が始まるのです。が、最終的な判決を下すには医師と外科医による性器鑑定証明書が出されなければならなかったので、それまでは結果はお預けとなります。
また、それぞれの夫婦が抱える問題に何一つとして同じものが無いように、不能裁判そのものはあまり長期化しなかったのだそうですが、典型的なケースというものは無かったそうです。
被告人の逃亡、相互告発、鑑定者に対する忌避申し立て。はたまた、二度三度四度に及ぶ鑑定に、鑑定報告書の相互矛盾、外科手術による状況の変化………などなど、裁判を泥沼化させる要因もまた種々雑多。標準型のケースでは三か月で決着がついたかと思えば、ややこしいケースでは三年にも渡って夫婦が争ったこともあるそうで。当該夫婦の両方が外科手術を受けなくてはならないことになり、こんなにも時間がかかったのだとか。
不能裁判の判決には、以下の三つのタイプがあります。
①不能と訴えられた夫に有利な、夫婦として生活するよう命じられた場合。
②不能が証明された場合。
③三年間の共同生活というテストの実施を命じられた場合。
①の場合は、当該夫婦はどんなに憎み合いいがみ合ったとしても、離婚は不可能です。
②の場合は、教区裁判官によって離婚が宣言(婚姻が解消)されます。夫婦として接することも禁じられます。まあ、裁判で争うぐらいなのですから、禁じられずとも夫婦として触れ合うなんてことは絶対にしないのでしょうが。更に、「損害を受けた」側は再婚(実際は初婚と見做される)も許されますが、敗れた側は慰謝料と教区の貧民の救済のために用いられる罰金の支払いを命じられた上、再婚の禁止を命じられます。まあ、この禁則事項はあまり守られていなかったようで、不能裁判に負けたある侯爵は、その後に迎えた妻との間に子供を七人も作ったそうなのですが。ふーん、良かったねって感じですね。
③の場合のテスト期間は、再びの登場を果たしたユスティニアヌス帝の勅令が教会法に取り入れられ、ローマ教皇に追認されたものだそうです。が、この制度の正統性については、満場一致で認められていたわけではなかったのだとか。そんなことをしてしまえば、か弱い妻は、夫の怒りや狂気や欲情という危険に晒され、更には屈辱を晴らす手段を選ばない夫によって招き入れられた他の男の暴力の餌食となってしまいかねないではないか……と。確かに、言われてみれば一理ありますよね。
こういった考えのためなのか、三年間のテスト期間が実施されるのは極めて稀で、十七世紀にはたったの二回しか行われなかったそうです。
最後に、不能裁判の手順をチャート化すると……
※スマホの画面では見にくいので、パソコンでの閲覧推奨です
申し立て(夫の悪夢の始まり)
↓
召喚許可の決定(悪夢の最初の方)
↓
召喚
|
/|\
/ | ↘
予備的な証拠調べと ↙ | 被告人の不出頭
七人の証言 | ↓
(この手順は16世紀末~17世紀 | 世俗裁判権の要請
初頭に消失したが、十九世紀に | ↓
再び現れた) | 身柄拘束
| ↓
| 欠席裁判
↓
訴訟当事者への尋問の決定
↓
尋問
↓
被告人に検査を受けさせるようにとの決定――――――→控訴可能☆
(夢ならばいつか終わるけれど、現実は、人生はまだ終わらない!)
↓
鑑定者任命の証書→一人、または複数の鑑定者を拒絶する可能性
↓
鑑定者の任命、宣誓
↓
鑑定の実施(悪夢真っただ中)
|
/|\
↙ | ↘
◇夫に有利な鑑定結果 | ◆夫に不利な鑑定結果
↓ | ↓
結婚の是認。訴えの却下 | 婚姻無効→控訴可能☆
↓ | ↙ ↘
離婚は不可。ただし…… | 妻の再婚 夫の再婚は禁じられる
↓ | はOK
控訴可能☆ | ↓
| 財産の係争、世俗裁判への移送
| ↓
| 支払い能力のない夫の逮捕
↓
鑑定結果が不明確な場合(悪夢は続くよどこまでも)
↓
三年間の共同生活←――四つの可能性
|
/|\
↙ | ↘
夫の検診(控訴可能☆)| 妻の検診(控訴可能☆)
↙ ↘ | ↙ ↘
有利な報告 不利な報告 | 処女だった 処女じゃなかった
(◇参照) (◆参照) | ↓ ↓
| 離婚(婚姻無効) 婚姻の是認(離婚不可)
|
↓
|
/|\
↙ | ↘
有利な報告 | 不利な報告
(◇参照) | (◆参照)
↓
控訴可能☆
↓
教区検察官による書類の点検
↓
判決
↓
控訴可能☆
となります!
面倒くさい! 非常に面倒くさい! たとえ結果が出ても控訴するチャンス☆がいくらでもあるなんて、非常に面倒くさい!
ちなみに控訴の手順は……
控訴の手続き
↙ ↘
教会の規則が犯されたと推定された場合 教区裁判所が世俗裁判官の権限を
| 侵害したり、世俗法や慣習を侵害
| したと推定される場合
↓ ↓
教会裁判の枠内での控訴 教権乱用を理由にした控訴
↓ ↓
司教区裁判所 高等法院
↓ ↙ ↘
大司教裁判所(スケールが大きくなっている) 控訴棄却 控訴受理
↓ | ↓
首座司教裁判所 | 他の教区裁判官
※首座司教はその国の聖職者のトップ | のもとに移送
と考えてください ↓
↓ 教区裁判官のもとに移送
聖座 ↓
(とうとう教皇のもとまで行ってしまった) 前判決の是認
となります! 面倒くさいチャート(本に掲載されていた図を再現しようとして失敗☆)を最後まで見届けてくださった方、ありがとうございます!
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