若者のクルマ離れとかいろいろ言われて久しい。
でも実際には、ハンドルを握る若者が減ってはいても、クルマと縁遠い生活を送っている若者はほとんどいない。
公共交通機関だってクルマなしでは成立しないし、そもそも大都市圏以外では、自家用車なしでの生活がまずありえない存在だ。
クルマというのは、多くの人が意識してないが、とても身近な存在なのである。
自分がそれを所有せずとも、それは自分の近くにいる。居続けて、自分の生活の一部を決定的に握っている。
それに気付かないのは、あまりに近くにいすぎるからだ。
クルマとは、一部の趣味人だけのものではない。
クルマとは、多くの人にとってのかけがえのないパートナーなのだ。
ひとりのクルマ好きとして、そしてクルマ小説を書いている人間として、本作のようにさりげないクルマの物語が、もっと注目されることを望んでやまない。