2 戻りつつある日常
それから冬至の日までは早く過ぎた。
火災のあった翌週から、実習棟を代用する形で授業が再開された。校庭には仮設校舎が建てられ始めたが、完成は冬休み中とのことである。
岩井と田中、そして教室の扉を閉めていた幾人かの生徒達は停学処分を喰らった。常識的に考えれば、これはむしろ軽い処分である。
火災で教室棟がほぼ全焼してからというものの、美邦はクラスメイトの誰とも会話をしていなかった。無視は徹底していた。掃除時間にも誰も何も言いつけないし、教師も何の用事も頼まなかったのだ。ただし、そんなことで今さら傷ついたり、寂しい思いをしたりはしなかった。
そんな中、芳賀のみが気まずそうな顔をしていた。まるで美邦に同情を寄せているが、周囲の目があって語りかけられないかのようだ。
十九日に終業式があり、学校は冬休みへと入った。
十二月初旬から降り始めた雪は、その二週間ほどで融けたり積もったりを繰り返しつつも、最終的に四、五センチほど積もった。町全体にしっとりと雪が積もったことで、冷たく寂しい港町の風景は逆に暖かく見えた。
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