3 孤独の病床

冬樹が目覚めたのは、茜差す夕暮れ時であった。


自分がどこにいるのか最初は分からなかった。そして笹倉が火を点けたときのことを思い出し、病院の個室であることを理解する。


上半身を起こそうとしたが、身体に力が入らない。肌の上に痒痛が奔る。仕方なく、ナースコールで看護婦を呼んだ。


すぐに医師がやって来て、冬樹の現状を説明する。


曰く、制服に着いた灯油が引火したらしいのだが、奇跡的なことに手足に二度熱傷――表皮から真皮までの火傷――を負っただけで済んだそうだ。その範囲もあまり広くはないという。むしろ、腎機能の低下により、血液中に老廃物の溜まっていたことのほうが問題だと言われた。それゆえ早苗に許可をもらい、眠っているあいだ人工透析を施したのだという。


なぜ腎臓が無くなっているのかについては問われなかった。


それから様々な検査を受けたあと、警察がやって来た。


警察は事故の際の様子を訊ねた。どう答えたらいいものか戸惑ったが、とりあえずはありのままを語る。これについても、特に疑念は差し挟まれなかった。医師といい警察といい、普通ならば疑問に思うことを何も訊ねないことに、冬樹は少し違和感を抱く。


その晩はほとんど眠れなかった。ベッドの上で、美邦が転校して来てからのことを思い返していた。失ったのは身体だけではない。家族もまた異常な行動を執っている。そのことが、宵闇と相まって底なしの孤独感へと冬樹を突き落とした。ベッドの上に独りで横たわっているという事実が恐くなった。そんな恐怖と何時間もたたかって、いつの間にか眠りに落ちた。

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